バリ島駐在記「コーヒーの花から採取された蜂蜜」

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コーヒーの花

 

 バリ島に6年間にわたり滞在中、ガイドの教育に携わったことは本ブログで既に触れたが、ガイドの一人がシンガラジャ(一般には「シガラジャ」と日本人は発音する)出身で、金に困り、あるとき蜂蜜の入った1.5リットル相当のビンを持ってきて、買ってくれないかと言ってきた。

 「今はコーヒーの花のシーズンで、蜂蜜といっても、コーヒーの花から採ったものなんですけど・・・」

 ガイドは遠慮深げに言葉を濁す。

 「いや、遠慮することはないよ。コーヒーの花から採った蜂蜜なんて、味わったことのある日本人はそうはいないだろう。買ってやる、いったい幾らで売りたいんだ?」

 「一本、5万ルピアで」

 「で、あんた、何本もってる?」

 「4本です」

 「だったら、俺が2本、Mさんが2本、買うことにしよう」

 ここでいうMさんというのは普段はケチだが、こういう買い物なら積極的だということを知っていたからで、買取は思惑通りスムーズにいった。当時の5万ルピアは20ドルくらいの値である。

 この蜂蜜の味がスムーズで、まろやか、日本のスーパーで売っている砂糖をしっかり混ぜた安物とは歴然たる差があり、いまだに忘れることができない。

 シンガラジャについて少し触れておくが、飛行機がなかった時代、インドネシアは3世紀にわたりオランダの植民地だった。その頃、バリ島の首都、というより大きな船が入れ、錨を下ろせる港はシンガラジャだった。太平洋戦争が始まった後、日本軍がシンガラジャ港の水深をさらに深くし、艦船が入れるようにしたという意味では、ボルネオ島、マレーシアのサンダカン港と同じで、航空が交通の中心となって以後、バリ島の首都は南のデンパサールに替わり、シンガラジャが田舎の街に変容したように、ボルネオのマレーシアの首都はサバ州のコタキナバルに替わり、サンダカンは田舎の街に変容した。


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