バリ島駐在記「南十字星」

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サザンクロス
(写真は南十字星)

「サザンクロスって星、どれがそれなんですか」

 そう尋ねてきたのは、バリ島現地のガイドである。

「お客さんが、夜になると、どれがサザンクロスかって訊くもんですから」

「あんたは知らないんだ」

「知りません。わたしだけじゃありません。バリ人のほとんどは知りませんし、関心もありません」

 南十字星の見えない北半球の人間がサザンクロスに対して、ほのかな憧れを持つのに比べ、南十字星の見える国の人間はまったく関心を示さず、日本と違って、夜になれば真っ暗闇になり、天蓋が星で埋め尽くされる土地に住みながら、月に示すような関心を星には持っていないという事実を、バリに赴任したときに知った。

 (バリ人は満月時には決まってそれを祝う儀式を行なう)。

 ただ、事実は、我々日本人が思うほど、クロスする四つの星は鮮度が明瞭なわけではなく、なかの一つは辛うじて、あれが四つのうちの一つなんだなと確認できる程度である。たとえば、南十字星が北斗七星のようにはっきり肉眼で捉えられるほどの明度をもっていたら、あるいは、バリ人にとっても魅力的な星座になったのかも知れない。

 私は何人ものガイドたちに、夜になるのを待って、サザンクロスのありかを教えた。バリを訪れる日本人観光客がサザンクロスを目にしてみたいと願うのは当然の姿勢だから。

白鳥座
(写真は白鳥座)


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