バリ島駐在記「昆虫」

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セミ

 インドネシアという国が一万近い島々で構成された横に幅の広い島嶼(とうしょ)国であることは、すでに説明した。

 また、インドネシア語とはいえ、あくまで共通語としてテレビ、ラジオなどで使われている言語であり、マレーシアとも源を一緒する、いわゆる「マレー語」であることもお伝えした。

 バリ島には「バリ語があり、インドネシア語とも、西隣のジャワ語とも、東隣のロンボック島の言語とも、その趣きを大きく異にしている。いずれもが異質の言語であり、島ごとに生まれた言語といっていい。

 そのバリ語のなかですら、昆虫に関しての言葉についてだけは、同じバリ島の内部でも、行く先々で、蝉を表現するバリ方言が異なって往生した経験がある。

 それぞれが、自分の生まれ育った地域の方言を口にするのだが、どれ一つとして同じ方言がなく、あるところでは「Nongncret」(ノンチェレッ)といい、デンパサールではTembrebret」(テンプレブレッ)といい、ある地域では「Cretnong」(クレットノン)という。全域を調べたら、まだまだ数々の方言が出てくるだろう。

 さて、発展途上国に特有の光景は「蝉」以上に「蝿」である。市場などに特に多くの蝿が飛んでくるが、私がオフィスに使っていた四畳くらいのスペースの部屋にも、始終蝿がやってきて、この数十年というもの蝿を目にしたことのなかった私は「蝿叩き」を買ってきて、一日に20匹以上を叩き殺していた。

 ヤモリは問題にはならない。 蚊や蝿を食べてくれる益虫だとの認識があるからで、人間に害を及ぼすことは考えられない。

 ちなみに、ヤモリのことをインドネシア語で「Cicak」(チチャッ)と発音する。

ヤモリ
 (写真はヤモリ)

 現在、バリ島は雨季だが、例年に比較して降雨量が減っているという。一方、ジャカルタ地域は豪雨で、避難騒ぎが起こっている。ここにも地球温暖化のひずみが間違いなくやってきている。雨季といえば、夜に雨が降り止んだとたんに、羽をもった大蟻が空中を舞い、車のライトのなかにヒラヒラと落ちてくる風情がまるで桜の舞い散る風情を想起させたが、これは新しい女王が新しい新居を得て、新しい巣をつくるための必死の賭けなのだということを後日になって知った。

 舞い落ちる羽蟻がたまたま池に落ちれば、待ってましたとばかり、池の金魚や鯉が食ってしまう。なかには、人間が地に落ちた羽蟻を集めてフライパンで軽く炒り、食べてしまう光景にもぶつかった。甘い味がするという。

 いまごろはドリアンがいくらでも食べられるだろう。

 例のテロ以降、バリを来訪する観光客が徐々にではあるが増えていることを聞き、安堵した。


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