バリ島駐在記「ゴールドを信ずる心境」

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儀式 ウパチャラ

 インドネシアにはどこの都市に赴いても、ゴールドやプラチナを売買する店がある。

 バリ島の首都、デンパサールの市街の一隅にも、同じゴールドを売る7、8軒の店舗が軒を並べ、休日ともなれば多くの市民が出入りする。

 バリ島庶民(おそらくインドネシア国民のほとんど)が銀行口座というものをもっていない。持っているのは給料が銀行口座に振り込まれるようになって、仕方なく持たされているホテルや観光業者の社員。とはいえ、バリ人は給料が振り込まれるや否や、即座に全額引き出して使ってしまう。使用対象は例外なく儀式である。儀式は公のもの、家族のもの、個人のもの、併せて一年に50回から60回はあり、ヒンドゥー教徒としては、儀式は絶対に無視したりネグレクトしてしまうわけにはいかない対象。むしろ、バリ人は儀式を行なうために働いているという印象が強い。

 ゴールドやプラチナの売買とはいえ、先進諸国のように、それらをインゴッド(塊)で売買するのではなく、必ずなんらかの装飾品の形をなし、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、リングなどの形で売られているが、装飾品としてはつくりが粗雑で、24金だから毀れやすく傷つきやすいというばかりでなく、デザインがきわめてダサい。

 いったん買った装飾品は買った店からもらうレシートと一緒に所持し、お金が貯まると、それを加え、さらに高値の装飾品に換えることもできるので、おばあさんが小銭の紙幣をゴムバンドで留め、店内をうろうろする姿があって微笑ましい。むろん、逆に売ることも可能だ。

 こうした店の存在は、インフレを何度か体験した国の人々に共通することで、通貨というものがただの紙っぺらになり得ることを認識しているため、ユダヤ人や華僑やインド人と同様、実質のあるゴールドやプラチナを持つことで、万が一の事態に備える感覚が自然に育まれたように思われる。

 こうした店舗だけは現地人であろうと、観光客であろうと、値を変えたりしないので、騙されることはない。ただし、装飾品としては使い物にはならないことを銘記しておいて欲しい。

(上の写真はウパチャラ=儀式)


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