あなたが、いなかった、あなた/平野啓一郎著

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書評:ためいき色のブックレビュー-あなた

  「あなたが、いなかった、あなた」 平野啓一郎(1975年生/学生時代に「日食」で芥川賞)

  2006年 新潮社より単行本初版

  2009年8月1日 新潮社より文庫化初版  ¥514+税

 本書には11篇の短編が収められているが、どれもに共通するのは、すさまじいまでの癖の強さ。作者の心象に去来するのは、私の当て推量だが、現代社会に対するアンチテーゼではなかろうか。

 作者はそれぞれの短編において、さまざまな着想をベースに緻密に計算し選択した言葉と文体と起承転結によって目先の異なる物語を紡いでいるが、新しい文学を希求するというより、寓話的な物語のなかに諦念と、ときに絶望を込めているように思われる。少なくとも、人生に対し肯定的な印象は受けない。

 作者の感性のありどころは異質であり、読者はどの短編にも翻弄されるだろう。

 総じて巧み過ぎの感があり、それが読者獲得にとって凶と出るか吉と出るかは予測の外。

 殊に、何を意図しているのか全く判断を超える作品からは狂気すら感じさせるものがある。


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