ある朝鮮人の女の子/梁英子著

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「ある朝鮮人の女の子」 梁英子(1953年生/在日Korean)著
帯広告:波乱万丈の半生を綴る衝撃作
2010年6月10日 近代文芸社より単行本初版 ¥1886+税

 

 この本は著者自身が主人公となる「私小説」で、かつノンフィクションに近い内容。

 今日まで万を越える数の本を読んできたけれども、これほど日本語による文章の拙劣な本に出遭ったのは初めて。ひどい本だと思いつつも、529ページもある分厚い内容に、途中で退屈し、疲労しつつも、結局さいごまで目を通してしまったのも事実。

 在日韓国人として関西で生を享け、学校もろくろく行っていず、ティーンエイジャーの頃から売春を生活の糧としてきた環境を考えてみれば、日本語の標準語による文法、言葉の選択、助詞の使い方などに間違いが頻繁にあっても無理のない話ではある。

 最後まで読まされしまった最大の理由は、内容を飾ろうといった意思を感じさせないこと、したがって虚飾、虚偽、誇張といった嫌味な印象から遠いこと、現実にあったことをありのままに、思ったことを思ったままに、書いていながら、その内容が尋常でない体験に満ち、つい次のページに目を移してしまったというところ。

 たとえば、「小学校5年生になるまで、歯を磨いたことがない」とか、初めてアルコールを口にしながら何杯も飲み、悪酔いして吐き続け、死ぬかと思った経験をしながら、日も経たぬうちに同じことをしたり、覚醒剤を飲みすぎてわけがわからなくなりながら、やめられなくなったり、読むうちにも、「なんて、こいつはバカなんだ」と腹を立てながらも、「次はどうなるんだ?」という好奇心を抑えきれずに、読み進まされてしまったと言っていい。

 成人してからの彼女の生活は上記したように売春で身を立てるわけだが、相手とする対象は、神戸港に入る外国船の船員や岩国にある米軍基地のアメリカ人GIなどで、身体が知った外国人の数は圧倒的で、戦後に駐留したアメリカ兵を相手にしたパンパンなどのレベルではなく、そこにマリファナ、オブタドリン、ピンクレディー、LSDなどといった私にもよく判らない覚醒剤を含め、連日にわたって呑む姿は想像するだに吐き気に襲われる。

 帯広告に「波乱万丈の半生」と書いてあるが、結果的に波乱万丈になったのではなく、自ら好んで波乱万丈の人生にしたという印象のほうが強い。しかし、この女性の生きた半生が時代に翻弄されたがゆえであろうことは容易に推し量れる。

 著者紹介の蘭に、「1986年ノルウェー移住、1989年スウェーデン移住、1991年スウェーデンの高校成人科入学&卒業、1995年ルンド大学中退、97年ストックホルム大学中退、98年KTH大学中退」と書かれており、こうした履歴を読むかぎり、この著者の思いつきで行動する性癖、努力とは無縁の甲斐性なしのキャラクターを感じてしまう。


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