きょうの一句/村上護著

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きょうの一句

「きょうの一句」  村上護(1941年生/山頭火、明治俳句、歳時記の研究者)著
副題:名句・秀句365日
2005年1月1日 新潮社より文庫化初版  ¥552+税

 

 俳句は好きだが、自分に秀句や名句はつくれず、努力してもタカの知れた俳句しかできないことは本人である私自身がよく認識している。

 それでも、このような書籍にぶつかると、素通りできず、入手して持ち帰った。

 365の俳句が並び、著者がそれぞれに解説を加えているが、登壇者はすべて俳諧にその人ありと知られる古今の著名人ばかり、私は独断と偏見で自分が好きだと思う句だけ、31句を拾って、ここに紹介しようと思う。むろん、解説は省く。

 正岡子規は「俳句をものせんと思えば、思うままをものすべし。巧を求めるなかれ、拙を蔽(おお)うなかれ、他人に恥ずかしがるなかれ」と説いている。(そう言われれば、「鶏頭の七八本もありぬべし」などという病床から庭を見てつくったといわれる句などはいかにも平凡だ。

 私自身の作句はさいごに三つ恥を忍んで披露する。

1.冬木立、月骨髄に、入る夜かな (高井机菫)

2.蝶墜(ちょうお)ちて、大音響の、結氷期 (富沢赤黄男)

3.梅一輪、一輪ほどの、暖かさ (服部嵐雪)

4.色欲も、いまは大切、柚子(ゆず)の花 (草間時彦)

5.梅咲いて、またひととせの、異国かな (ジャック、スタム)

6.わが山河、まだ見尽くさず、花辛夷(こぶし) (相馬遷子)

7.みなさんの、青い地球に、核兵器(おとしだま) (高橋龍)

8.赤子いま、立てり地球、動くなよ (山口善子)

9.地球儀に、ひろがる砂漠、鳥帰る (野沢節子)

10.辛夷(こぶし)咲く、空の固さを、揉みほぐし (野田禎男)

11.虚の実の、ひと日を鳴りて、春時計 (宮崎敦子)

12.まことより、嘘が愉しや、春灯(はるともし) (吉屋信子)

13.ひとの恋、あはれ(哀)にを(終)はる、卯浪かな (鈴木真砂女)

14.羅(うすもの)や、人悲します、恋をして (同上)

15.さゆる夜の、ともし火すこし、眉の剣 (斯波園女)

16.帯解けば、疲れなだるる、夕薄暑 (古賀まり子)

17.地雷踏む、直前のキャパ、草いきれ (鈴木六林男)

18.雹(ひょう)晴れて、豁然(かつぜん)とある、山河かな (村上鬼城)

19.雷鳴や、するが(駿河)を攻むる、甲斐の雲 (井上かつこ)

20.花さびた、一戸となりて、田を捨てず (永田耕一郎)

21.わが砂漠、出発点か、終点か (津田清子)

22.あかあかと、日はつれなくも、秋の風 (松尾芭蕉)

23.虫の夜の、星空に浮く、地球かな (大嶺あきら)

24.一の橋、二の橋ほたる、ふぶきけり (黒田杏子)

25.西国の、畦(あぜ)曼珠沙華、曼珠沙華 (森澄雄)

26.頂上や、ことに野菊の、吹かれおり (原石鼎)

27.狼星を、うかがふ菊の、あるじかな (宮沢賢治)

28.帰国して、もう日本の子、七五三 (山田弘子)

29.恋人も、枯木も抱いて、揺さぶりぬ (対馬康子)

30.はらわたの、紆余曲折を、年の暮 (仲原道夫)

31.分別の、底たたきけり、年の昏(くれ) (松尾芭蕉)

 言うまでもないが、本書に収められた句は作者の判断や好き嫌いで選考されているわけで、昔から知られる超有名な句などは省かれている。365句だけ選考することの難しさも理解できる。

 私は、たとえば、小林一茶の「やれ打つな、蝿が手を擦る、足を擦る」や「きりきりしゃんとして立つ桔梗かな」といった庶民的な句も、あるいは一線から身を引いた角川博の「大文字、商家の妻が匂ひ立つ」や「人亡くて、山河したたる、大和かな」などという華麗な句も好きである。

 では、私の句;

1.蛙ども、ここを先途の、大合唱

2.人去って、真っ赤なシクラメン、買い来たり

3.子が病めば、木枯しの寺、土下座をも

4.山里は、一軒一軒、月の下

 お粗末さま。

 


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