すれ違う男と女/天乃真中著

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「すれ違う男と女」  天乃真中著
河出書房新社刊 単行本 2003年12月初版

 

 ひさしぶりに聡明な日本女性の著作に出遭った印象。

 文章にめりはりがあり、きわめて読みやすい。男女(♂♀)それぞれの本質を説き、違いを述べ、「なぜすれ違うのか」の原因が解説されている。

 私には男と女が理解し得ないのは永遠のことのように思え、本書を読んでも、なおかつ解ったようで解らず、異質のものを理解することがいかに困難なことかだけは理解できた。

 以下は知らなかったこと、驚いたこと、信じられないことなど:

1.中世のモロッコの専制君主は多くの女に888人の子を産ませ、ウクライナのご婦人は18歳から38歳までの20年間に双子、三つ子を産み続け、合計60人の子を産んだ。

2.戦争は個体を死滅させもするが、遺伝子を活性化させもする。また、突然変異は状況の悪化による滅亡危機から人類を救う。

3.同性愛者をホモセクシャル、両性愛者をバイセクシャルというが、異性愛者は「ヘテロセクシャル」という。

4.男の脳は円形で、中心は一つしかないが、女性の脳は楕円形で中心がニつある。ことのことが未知のショックに邂逅したとき、男はショック死しても、女は混迷しつつも、なんとか生き延びるチャンスを探し出す理由。

5.色盲は女にはいない。女の視野は広いが近いものしか見ないのに対し、男の視野は狭いが遠くまでを見通す。

6.膣内にGスポットは存在しない。

7 女のうち不感症は2-4%、セックスでオーガズムに達する女は10%、自慰行為は女の50%が定期的だが、20%は無関心。 自慰行為の大半はセックスで満たされたなかった後に行う例が多い。

 (オーガズムを経験できる女が全体の10%というのは、どう考えても、信じがたい)。

8.ゲイが9とすれば、レズは1の割合。 同性愛者は古今東西どこにでもいたし、いる。

9.人間は最小のエネルギー消費方法を選択しながら進化してきたはずだが、それにしては快楽のためにだけ行うセックスや自慰行為はエネルギーの無駄であり、自然の法則に反している。

 (自然の法則に反する行為は人間だけの特許なのか。猿に自慰行為を教えると、やめられなくなるという話を聞いたことがある)

10.1931年の満州事変から1945年の太平洋戦争終結までの約15年間に、中国国内で2千万人、日本人の310万を含む東南アジアで1千万人が死んだ。終戦直後の日本人の平均寿命は男が23.9歳、女が37.8歳だった。

11.コンドームという名の侍医が2千年前にコンドームの使用をチャールズ2世に提案。以来、コンドームと名づけられた。西洋における当時の一般的な避妊方法は膣外射精だったから、破格の発明だった。

 (日本には膣外射精という習慣はなかったため、堕胎を助長したのか?)。

 批判というより、疑問に思ったのは「女にとってはセックスでオーガズムに達していなくても男から射精を受けさえすれば妊娠は可能」というのは事実ではあるが、「ヴァギナ」の著者のいう「オーガズム後に射精を受けたほうが自己の遺伝的な欠陥を補完してくれる良質な精子を選択できる」という説が脳裏にあるため違和感をもった。

 女体が性行為においてオーガズムに達することができる以上、それは進化の過程における必然性であり、生殖行為そのものにも不可分の関係が存在するに違いないと思うからだ。

 さらに、「女性のおっぱいにむしゃぶりついて舐めたり、しゃぶったり、吸ったりするのは、男が子供だから」というのは、「男はだれもがいつまで経ってもマザコンだ」というに等しいが、母親への回帰願望というより、「人間の女性の乳房の半球形という、他の哺乳類にみられぬ形が性的な魅力と不可分にあるから」というイギリス人著者(名は忘れた)の説に軍配を挙げたい。男は自分にない女の乳房に女が思う以上に魅力を感ずるのだ。乳首を見てみたい、しゃぶってみたいと思うのはごく正常な男の欲求であって、決して幼児性からではないと思う。もし、乳房が半円形ではなく、ぺしゃんこで、乳首だけが肥大していたら、その乳首にむしゃぶりつきたいと思う男はいないのではないか)。

 いずれにせよ、男と女の性に関しては、今後とも研究が継続するだろうし、新しい発見もあるだろう。

 ただ、「♂と♀のすれ違い」というタイトルにしては、最終章に近くなって「女性解放運動」の類の話があり、これは余分だったのではないか。女性が長いあいだ抑圧されてきた歴史については、西欧でも日本でも、それぞれポイントを絞った著作が別に存在している。 著者本人も「どこまで書いて終わりにすべきか迷ってしまった」といった本音を「あとがき」に記しているが、この部分を書き加えたことで、散漫な印象を残してしまったことは、作者が聡明な人であるがゆえに、かえすがえすも残念なことに思えた。

 また、セックス時の女性のフェイクの話は前の章で説明されており、ダブっている。

 「性差」による男と女の違い、脳のありかたの違いなど、学んだことは少なくない。


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