ぢぞうはみんな知っている/群ようこ著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ぢぞう

 「ぢぞうはみんな知っている」 群ようこ著

  新潮文庫2006年6月文庫化初版

 この作者の作品に接するのは初めてだと思う。

 もともと、私はベストセラーとか、話題作とか、受賞作品とかは、意図的に避けてきたし、この作者もその一線上にあったような気がする。

 著者略歴を見ると、すでに52歳、若手といえる作家ではない。しかも、著作も僅かな数ではない。

 作品はエッセイが多いようだが、本書は「ネコ」と「母親」だけが印象に残ったほど、この両者への思いの丈が文章から窺える。

 独身で子のない生活をネコに愛情を注ぐことで補い、母親が子である作者にお金をせびる根性を憎悪しながら、「死ね」とか「死んじまえ」とかいう言葉をぶつけないところは著者に(収入面でも精神的にも)余裕があるからで、母親の灰汁の強さは作者のキャラの強さのなかにDNAとしてしっかり遺されているという印象。

 そのキャラの強さこそが、本書のみならず、この作者のエッセイを面白くさせているのではないか。この母親なければ、この作家も世に誕生していないという見方は間違っていないだろう。

 どの短編エッセイも読み手を飽きさせないという点では、評価ポイントとして高いものを持っている。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ