なぜ韓国はパチンコを全廃できたのか/若宮健著

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「なぜ韓国はパチンコを全廃できたのか」
若宮健(1940年生/ジャーナリスト系の著述家)著
2010年12月10日 祥伝社より新書として初版 ¥760+税

 

 パチンコという、世界のどこにも見かけないし、売り込みに行っても見向きもされない機器は戦後、荒廃の地から在日韓国人が主となって運営してきたという理解をしていた。

 私自身はむかし友人に誘われてほんの少しなぐさみにやったことがある程度で、パチンコというものに溺れたことはない。私のイメージとしては、溺れるにはあまりに体裁が悪いという固定観念があった。

 日本には元々「競馬」「競輪」「オートレース」など公営のギャンブルがあり、法律的に認められているというだけでなく、携わる人間も物も徹底した管理下に置かれている。それに比べ、パチンコはギャンブルであることが公に認められているものではないのに、例の「換金」という姑息な「逃げ道」を導入することで、警察も大目に見てきたという事実については、ほとんどの日本人が知っている。

 それはちょうど売春禁止法がありながら、ソープランドでは公然と売春がなされていることと同じで、公的機関は見て見ぬふりをする「なぁなぁの姿勢」がパチンコの「換金システム」にも適用されているだけで、この国に特有の「言わずもがな現象」。

 にも拘わらず、TVの番組を通じ新しい機種などが紹介されたり、名の売れたタレントを遊ばせたり、有名アニメを使って宣伝を図るというような映像がときに流れると、「こいつら、非合法のパチンコと知ってやってるのか? それと知って、なおギャラをとるのか?」ときわめて不愉快な気分に陥ったことは本書の作者と全く同じ気持ちだった。

 「韓国人によって戦後流行するようになった」と上記したが、本書によれば「韓国では2006年にパチンコを禁止する法案が成立したのだが、それは「ドラッグよりも大麻よりも依存性が高く、危険であり、人間をダメにするパチンコ」という観念をしっかり根づかせ、そういうコンセンサスを得て、国会議員も同調し、法律として成案したというものだった。それまで1万5千軒あったパチンコ店がすべて消えた」という。

 ところが、「この韓国の快挙について、日本のメディアはどこも報道しなかった。この事実は日本のメディアに問題意識が欠落していることを暗示している」。

 現実、パチンコにからむ犯罪や事故、事件は後を絶たない。

 「主婦がサラ金から金を借りながらパチンコにのめっている」「負けた腹癒せにパチンコ店に放火する」「借金まみれで家庭崩壊、家族殺しが起こる」「親と一緒に店にやってきた幼児が店内で誘拐される」「駐車場に置いた車に乳呑み子を置きっ放しにして熱中症で死に追いやる」などなどだが、サラ金業者にとって主婦たちは涎の出るお客だったという事実、ところが、「2010年から法改正があり、夫の同意書や年収証明を提出しなければ融資は受けられないことになった。官僚は主婦を助けるつもりでこの法律をつくったらしいが、サラ金から借りられなくなった主婦がパチンコをやめることになれば策が功を奏することになっただろうが、主婦のなかには闇金に走る人もいて、結果として自殺に追いこまれる主婦もいた」

 「パチンコ店は鉄火場であり、決してアミューズメントセンターではない」とは、作者の強い言葉。「子供手当てはパチンコ手当てに変わるだけ」という言葉すら、この業界にはある。

 韓国のマスコミには、「パチンコ業界は数千人の利益のために数百万人を泣かせる業界」という考えがしっかり根づいていた。日本では警察官僚が天下りしているのは美容整形外科だけではない。「パチンコ業界にさえも天下りしている。元々、公認ギャンブルには利権が絡み、政治家や官僚が甘い汁を吸っているという背景が長く続いている」。

 「違法な換金のいかさま博打を見て見ぬふりをしている政治家に非がある。政治も行政もでたらめすぎる。それを裏書きしているのが、パチンコチェーンストア協会という名の奇妙な組織の存在で、協会のアドバイザーになっているメンバーが政治家という醜悪さ。鳩山邦夫、海江田万里をはじめとする民主党議員が34名、自民党11名、公明党3名という陣容。これら議員はおそらく協会にとって高額のギャラを払わざるを得ない用心棒であろう」

 政治家という動物は金という餌に群がるハイエナ、「社会を腐らせるものが何か」については理解も洞察もない。

 「あきれたことに、この協会にはパチンコ支援プロジェクトというのがあり、パチンコをギャンブルとせず、健全な娯楽遊戯として認め、警察の管轄方式もゆるいものにするなどというふざけた内容」

 「一方で、全国紙の大新聞がパチンコの全面広告を大喜びで掲載する神経はいったいなんだ? といいたくなる」

 「こういう実態を調査し、まともな方向を見据えたうえでパチンコ業界はもとより、行政サイドへの適切な批判なりコメントなりを日本のマスメディアはぶつけたことがない」。

 以上、「 」内は本書からの抜書き。

 偶然のことながら中国で鉄道事故が起きたばかりのタイミングだが、日本が中国の杜撰な対応を一方的に言える立場にないことを知るべきだ。福島の原子力発電所のときだって、政府も東電も事故発生当初は実際の数字をかなり隠蔽しようとし、公表することを渋った。

 法律に違反しているパチンコに関してはまた何をか言わんである。


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