ぱいかじ南海作戦/椎名誠著

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ぱいかじ南海作戦

「ぱいかじ南海作戦」 椎名誠著
新潮文庫  2006年12月初版 (2004年単行本)

「ぱいかじ」とは、「南風」と書き、沖縄県の西表島の方言、那覇や首里方面では「はえ」と呼ぶ。

当然ながら、本書の舞台は西表島のビーチ、そこで知らぬ者同士が偶然落ち合い、山や海からの恵みを受けながら、気持ちをそろえて生活するという仕立てになっている。いわば、無人島での生活といっていい。

西表島には私自身も何度か行っているし、海にも何度か潜っているため、土地に対する懐かしさは感じたものの、椎名誠が最近書いてきた外国の旅行記に比較すると、底が浅い印象は拭えない。

解説者は「日本文学というものが懐手でちょっと傍観者的な感傷をテーマとしてきたとすれば、椎名誠の作品は段ボール箱に乱暴にキャンプの資材を投げこみ、蚊の襲撃に耐えながら、海辺でテントを張り、仲間と布団を干して空腹に気が狂いそうになりながら居酒屋の出すカツ丼を目指すような作品世界で、日本文学の本流からはまったく外れた世界を提示するもの」と評し、「同じ色でも違う色を隣に並べてみると、また違った色に見える。そのような関係性を受けての変化こそが脳の醍醐味であり、文学というものの生命線でもある」と力んでいるが、私にとって、椎名作品は一種の「落語」であって、同じものが作者の言葉や独特の表現によって違って見えたり、思えたりすることの面白さと、肩の凝らないユニークさに魅力があると思っている。

本書は沖縄、西表に関する知識不足が感じられ、新潮社に無理に書かされたような、浅薄なもの,、物足りなさを私は感ずる。私自身が沖縄に10年を過ごし、ほとんどの島を潜り歩いた経験があるからかも知れない。


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