まほろ駅前・多田便利軒/三浦しをん著

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まほろえきまえ

「まほろ駅前・多田便利軒」 三浦しをん著
帯広告:直木賞受賞作
文芸春秋社刊  2009年1月10日文庫化初版  ¥543+税

 「受賞作」というものに2004年に本ブログとつきあう以前には、縁のなかった私だが、今回も敢えて本書を入手した。むろん、この作者の作品に触れるのは初体験。

 起承転結を担うストーリーの展開、全体の構成などは、小説だからある程度仕方がないとしても、「つくりもの」の印象自体は拭いがたいものがあるが、そうしたことを凌駕するのが、主人公である便利屋の男性と、高校時代に全く無口だったという、突然ころがりこんできて居候になった同期生の男との1年余にわたるつきあいと、二人の間のやりとりで、その一点に心を惹かれた。

 登場人物のとりあわせ、配置にも奇抜なものがあり、全体に飽きのこない作品となっているが、ことに、主人公二人のあいだに交わされる会話には平均的な作家のそれを上回る精妙さ、卓抜さ、相互の間合いの程のよさ、などがあり、瞠目させられた。これまで多くの本を読んできたが、会話文に魅了されたのは久しぶり。

 解説者は本書のモチーフは「再生」にありと洞察しているが、私にとって本書のモチーフにはほとんど関心を惹かれず、ひたすら汗臭い二人の男のやりとりに魅了され、二人の会話に眼を釘づけにしつつ読み終えた。

 表現のなかに二つ、記憶に残ったのは、一つは、派手派手な女の格好に対して、「ジャングルに生息する毒をもつ大トカゲがインコの化け物を捕獲した瞬間みたいな姿」との表現と、もう一つは、男の寝言に対して、「瀕死のグリズリーが産気づいたみたいに、うなされていた」との表現。いずれも作者の個性を現しているが、いずれにも相当の時間をかけて考えたのではないかと邪推した。凡才の頭脳からは簡単には出てこない卓越したものがある。

 本ブログで小説づくりを志している方々には、本書の会話文は参考になるだろう。


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One Response to “まほろ駅前・多田便利軒/三浦しをん著”

  1. アオイ より:

    彼女は「BLが好き!」と言って憚らない素敵な作家さんです。
    この「まほろ駅前~」は未読ですが、登場人物のふたりからはソコハカとなくBL臭がするらしいですね。是非読まねば、と思います。
    そんな私は現在彼女のデビュー作「格闘する者に○」を読んでいます。まだ読み始めですが、確かに会話文章は卓越していますね。
    彼女の本をもっと沢山読んで、スキルアップを図りたいと思います。

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