やぶからし/山本周五郎著

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yabukarashi

「やぶからし」 山本周五郎著  新潮文庫

 

 この作家は大正生まれの人や戦前の昭和生まれの人に人気が高い。それが何故かを考えていた。

 代表作の「椎の木は残った」や「青べか物語」、そして本書を読んで、それが「人の情け」であることに気づいた。

 現今の言葉に置き換えれば「癒し」であり「人情の機微」である。おじいちゃん、おばあちゃんたちは山本周五郎の作品に癒しを求め、かつ感じつつ読んでいたのだ。さらに言えば、どの短編もハッピーエンドである点にも、高齢者の気分を高揚させるものがあるような気がする。私の母親も周五郎ファンの一人であるが、どうやら、TVのドラマ、水戸黄門が好きな世代に好まれるようだ。

 本書を読了して;

 「真実らしい嘘はOKだが、嘘らしく聞こえる真実は口にするな」と徳川家康がいったという言葉が記憶に残った。

 もう一つは「寸善尺魔」という四文字言葉である。昨今、あまり聞かなくなった言葉だが、世間には善いことはわずかだが、悪事は山ほどもあるといった意味だろう。「寸」も「尺」も度量衡で使われなくなって、ついでにこの言葉も世の中から消えたのであろうが、社会に悪が満ちていること自体に変化はない。


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