わが母なる暗黒/ジェイムス・エルロイ著

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  「わが母なる暗黒」 ジェイムス・エルロイ(1948年生/アメリカ人)

  原題:My Dark Places

  訳者:佐々田雅子

  発行年:2004年1月10日  ¥952+税

 本書は私の忍耐力の衰えを存分に感じさせてくれた。

 例によって、登場人物と地名がカタカナ文字で頻発というより、インドネシアのアチェ州を襲った津波のように氾濫することも一因ではあるが、ノンフィクションと知って好んで入手したにも拘わらず、読むことにここまで難渋するとは夢思わなかった。600ページを越える行変えの少ない文章づくりも頭痛の種となった。

 内容について触れると、1958年、著者が10歳のとき、離婚していた男好きで酒好きの母親が陵辱されたうえで殺害され、蔦林(つたりん)のなかに遺棄された事件が主軸であり、それが迷宮入りとなったことに、本書のテーマがある。本件は冒頭で語られるが、カリフォルニアで実際に起きた事件。

 1963年、著者17歳時に、父親が脳卒中で死去、以後一人ぼっちの生活をするが、学生時代はユダヤ人の学校に入り、ナチスの兆章を胸につけて故意に嫌味なことをし、喧嘩に明け暮れ、卒業後も定職に就かず、生活を万引きや家宅侵入に頼り、何度かの拘置所生活を経ながら、アルコールと麻薬漬けの毎日を送りつつ殺された母親を想って自慰行為に耽り、最終的に幻想から意識混沌という状態に立ち至る。

 友人の勧めで、酒と麻薬からの脱却を支援してくれる会に入って更生し、犯罪を中心とする著作で成功。

 40代に入り、過去に迷宮入りした事件を追う定年間近の警察官の支援を受けながら、母親を殺した犯人を特定する調査に執念の火を燃やすという構成になっているが、内容は自分史、家族史、家系史、さらにはカリフォルニア史にまでおよび、あまりに多くを語りすぎているために、ほんの数ページ読むたびに眠気に襲われる。

 まるで入手した資料はまるごと、取捨選択せずに書いたかのような印象すら受ける。言葉を換えれば、よけいなことを書きすぎている感が否めない。犯人を特定できなかったことが、このような構成にさせたのではないかとも思われる。

 ただ、自身はもとより、父母、親戚の恥部ともいえる部分にまで踏み込んでの執筆には、他者との比較を絶する根性を見た気がした。


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