アメリカ性革命報告/立花隆著

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「アメリカ性革命報告」 立花隆著
文春文庫 1979年文藝春秋社から単行本
文庫化初版 1984年1月

 

 著者は「田中角栄の金脈」を追ったジャーナリストとして名を世に知らしめた人だが、本書を著すにあたって参考にした資料、文献の膨大な量とその多岐にわたる事実、多彩さ、併せてチェックの執拗さに驚きを禁じえなかった。労作といっていい。

 アメリカ社会の性について書かれた本でありながら、同時に世界中の人間の性についても検索の触手が伸び、「性に開放的な社会ほど性表現は消えるか軽いタッチになり、性に抑圧的な社会ほど表現が露骨になる」との結論には納得がいった。それはちょうど卑猥な言葉に子共のころから慣れている下層階級の人ほど卑猥な言葉に反応せず、普段そういう言葉とは縁のない育ち方をした上流家庭の人間ほど烈しく反応することと相似の関係にある。

 1970年代、しばしばビジネスで足を運んだ当時、私個人はアメリカ国内で、ポルノ館の映像や、大人の玩具店などで、セックスの在り方、多様性を教えられたものだが、本書はアメリカで起こっている性革命の進行具合とともに、キリスト教という宗教が一種の縛りとなり、アメリカ国民の性意識が意外に保守的な面のあることを教えている。

 記憶に残った箇所を以下、備忘録的に箇条書きにする。(   )内は私の感想、意見。

1.米国は1950年まではイギリスのヴィクトリア朝時代的道徳観念のもとに、性がしめつけられていた。ポルノが全面解禁となったのが1970年。その影響は、東海岸(封建的なイギリス系、いわゆるWASPが多い)での方が西海岸より強く、サンフランシスコ、ロスアンゼルス(開拓者やヒスパニックが多い)を中心とする西海岸で緩やかだという実態に表れている。

2.(アメリカの女性は15歳が処女喪失の平均的年齢だとばかり思っていた。「Fiftenn」という本まで存在し、私はそれを原書で読んだ経験がある)、ところが、1977年のタイム誌の性意識調査では、17歳から18歳までの若者2,400人を対象に調べたところ、一夫一婦制をよしととする者が80%、性体験がまだない者が70%という結果で、アメリカ人の意外な保守性に驚愕。

3.性の多様性という面で「フィスト・ファッキング」が紹介されている。

 ホモの男が死体となってハドソン河に浮かび、死体解剖した結果、男の直腸が破られていたことが判り、拳骨を腕ごとアナルに挿入してしまうセックスの在り方が存在することが社会的に知られるようになった。

 また、「スカル・ファッキング」というのは頭を剃ってしまい、口に呼吸用のチューブをくわえてアヌス挿入に慣れた男のアヌスに剃った頭に油を塗って顎まで入れてしまうという強烈なことをホモはするらしい。(それでオーガズムに達するとしたら、挿入された方なのか挿入した方なのか、ホモではない人間には全く判らない。頭がおかしいのではと疑いたくなるし、精神異常を感じさせもして、ホモ同士の行為には不可解な部分が多いが、アヌスに手を入れる、両手を同時に入れるなどは日常茶飯事のことらしい。むろん、ヴァギナにすらフィストを挿入する、両手を入れてしまうなどはあるようだが。だいたい、アメリカの市街地の大人の玩具店で売っている電池で動くペニスの動きとサイズを目にしたら、たいていの日本人は驚愕するか恐怖を感ずるだろう)。

 いったいに、ヘテロ趣味(普通の男女間のセックスにしか関心を持たない人間)よりホモ趣味の男のほうが性に荒々しさを求め、乱交を好む性癖がある。とはいえ、ホモのセックスはアナルセックスか、フェラチオか、いずれかで終わるのが普通。

4.アメリカのポルノ映画では、10歳の少年と8歳の少女が大人の男女がするのと全く同じレベルの性枝を駆使し、性交を行なう映像までが出回るようになった。アメリカではこれを「チャイルド・ポルノ」と称し、この映像ビデオがよく売れるという。この少年と少女は兄と妹で、撮影者は母親だったという。アメリカには児童福祉法、少女売春を禁ずる法規がない。この映像は大人の男たちが一般的にもつ「ロリータ趣味」とホモたちが持つ「美少年願望」を同時に充足させている。

5.(ただし、どのようなポルノ映像を製作しようと、ポルノに飽きない人はいない。たいていはあっという間に飽きるし、私個人も初めてアメリカでポルノ館やストリップ館に連れて行かれた時はびっくりしたが、やることに情緒性が欠落していて(ある意味では陰湿感がなく)、映像がスポーツに見えてき、当時日本の日活でやっていた日活ポルノの、映倫に触れるため肝心の部分は見せないという、性器の結合を想像させるだけの映像の方にはるかに興奮したことを記憶している。つまりは、映像は映像以上のものにはなれないが、想像は個人個人の想像力によってどのようにも飛躍され得るということで、だからこそ、映画は原書を上回ることはない)。

6.性犯罪に強姦と殺人行為がコンビネーションされていて、相手を強姦後に殺す、強姦しながら殺すという犯罪が起こった。男は逮捕されるまでに32人を殺したという記録がある。

7.キンゼイ報告:過去に一度でも同性愛欲求を持ったり、あるいは性行為をした経験者が37%に昇る。(考えられないほど多いという印象)。(ただし、同性愛の統計では、常に、ホモがレズを圧倒的に凌ぐ数を示し、7対1、あるいは5対1という関係である)。

8.アメリカでは同性愛は多くの州で依然として犯罪とみなされ、性的嗜好の差別はある。むしろ、日本の方が「成人同士が互いに合意のうえでなすすべての行為は罪に問われない」と、ホモに対してもゆるやか。州によっては、異性間でのフェラチオ、クリニングスも罪に問われる。現実に、同性愛者はそれを理由に解雇されたり、アパートから追い出されたりする。だから、自分がホモであることを他人に知られないように注意を払う。同性愛者に対し最も厳しく対処するのは軍隊、士官学校、CIA,FBIばかりではなく、大手企業にも同じ傾向があり、ホモ趣味をもつ若者は懸命に自分の嗜好を隠す。

 (私が従事していたトラベルビジネスでは、ホモが多かったことは事実)。

9.老化現象とインポテンスの問題。勃起不能は老化現象として一般的に説明されてきたが、そう単純な問題ではないことがわかってきた。勃起現象は血液がペニスに流れ込み、充血して、勃起するのだが、原因を大別すると「大脳勃起」と「触覚刺激性反射勃起」とに分かれる。精神安定剤、鎮静剤、催眠薬、麻薬などは神経系統に作用してインポをもたらす可能性がある。(かといって、例のバイオグラなどを使うと、心臓の弱い人は鼓動が高く、激しくなり、死に至るケースがある)。

10.女が死ぬまでセックスが可能なのに比べ、男には勃起不能がいずれはやってくる。だから、どんな男も、セックスをする相手の有無は別に、死ぬまで勃起できることを心の底から祈っている。「人は自分が老化したと思うとき老化するのであり、勃起能力を失ったと思うときにインポになる」というW・ステッケル(学者の言)が本書に書かれている。

 (ただ、女は死ぬまでセックスが可能とはいえ、興奮しなくなる、したがって体液でヴァギナが濡れてこなくなる、挿入されることに痛みが伴うようになる、したがってセックスを好まなくなるという状況は起こり得る)。

11.性的現役を続けることが性的能力の寿命を伸ばす。アメリカの黒人夫妻で、123歳で死んだ夫は120歳まで性交渉が可能であり、78歳以降だけで8人の子供をつくっている。

12.ヒトラーはゴールデンシャワー(女性から小便をかけてもらう)とブラウンシャワー(女性から糞を体にかけてもらう)の愛好者だった。(W・C・ランガーのOSSLレポート)。

13.権力衝動の強さと性衝動の強さと上昇志向の強さのあいだには相関がある。これは動物社会と同じ。プレイボーイとして名高いキッシンジャーが「権力こそ最終的な媚薬だ」との名言を残したが、こうしたことと関連している。世界中、権力者には性的に特異な趣味が顕著。のぞき趣味、露出趣味、フェティシズム、三人プレイ、鞭打ち、卑猥な言葉をあらん限りに口走らせ、みずからも口走る癖など。また、生理中の女性から血だらけのタンポンを買い取り、それをしゃぶり、しまいには食べてしまったという連邦判事がいる。(「英雄は色を好む」とは日本社会で昔からある言葉だが、西欧の現実とでは、比較を絶しているという印象)。

14.カソリックの伝統の強いアイルランドではほとんど前戯なしでセックスをし、あっという間に終わるから、女がオーガズムを経験できず、オーガズムを知らずに一生を終える女が少なくない。逆に、男の側も、舌を相手の口のなかに入れるようなキスは罪悪だと思っているし、指や舌でクリトリスを刺激するような技巧とは一切関係のないセックスをするため、性について抑圧感が強い。女の側も上半身を下着で覆ってセックスをするという。ために、それと口には出さないが、性に対する関心は実際には非常に強く隠れている。(カソリックとは人間抑圧宗教という印象)。

15.アフリカのチュワ族では、少年、少女を一つの部屋に一夜おきに互いにパートナーを換え、セックスを経験させる部族もあれば、未成年がセックスをしたことがバレれば、二人とも串刺しにされて殺される部族集団もある。

 また、オセアニアのアローア族では、母親が男の子であれ女の子であれ、性器をしばしば触れてやり、愛撫してやり、子共のうちに性感を教え、クライマックスを教えてしまう土地もある。

 アフリカのシワ族では、すべての少年がアヌス性交をしあい、それに参加しない人間が性倒錯者として扱われ、仲間はずれにされる。

 ニューギニアのケラキ族はすべての独身男性がアヌス性交をする。

 ヒマラヤのレプチャ族では、子共のときから相互ペッティングをするように教えられ、十一、二歳までに完全な性交を行なう。また、子共同士のセックスのみならず、老人と八歳の少女とのセックスも許容されている。

16.婚外交渉を認めている社会も少なくない。54の社会で、それぞれの形で認めている。インドのトダ族では、男女とも婚外交渉が自由で、この社会には「姦通」にあたる言葉が存在しない。自分の妻がほかの男と寝た場合、それを夫が嫉妬すると、嫉妬した夫が不名誉なことになる。南米のシリオノ族は、男は自分の妻の姉妹、また自分の兄弟の妻とその姉妹と自由にセックスしてよいし、妻のほうでも夫の兄弟、あるいは自分の姉妹の夫とセックスすることことが認められている。つまり親族内では乱交が許容されている。

 (日本でも、江戸時代は金持ちが多くの妾を囲ってしまったから、嫁さんにあぶれる男がたくさんいたため、幸運にも嫁をもらえた男が仕事に出かけて行くのを待ってたように、独身で、女に飢えた男たちがその嫁さんの周囲に群がって、セックスをお願いしたというし、田舎、村ではわりとおおらかなに夜這いや、隣近所の女房に手を出す男が跡を断たず、それを受け容れる習慣が暗黙のうちに認められていた土地もあったという)。

17.社会背景や、時代が違えば、男が女のどこに性的官能を感ずるか、あるいは評価するかも異なってくる。

 南太平洋地域はだいたい、男の好みは肥満した女であり、豊穣をイメージするからだという。垂れ下がった老婆のような乳房を好む男社会もあるし、大陰唇の長い性器に魅力を感ずる男たちも存在する。

 また、昼間にしかセックスをしないという種族もあるし、屋内では決してセックスをしない種族もある。

 家族が見ている前で平気でセックスをするのが当たり前の社会もあるし、衆人環視のなかでセックスするのが当たり前の社会もある。(曽野綾子によれば、家屋が小さすぎ、かつ子共が多すぎるため、子供らは必然的に両親のセックスを見て育ち、ためにセックスの面では早熟だという)。

 ある社会で禁じられていることが、別の社会では奨励されていたりする。それだけの多様さを前提としているからこそ、それにも拘わらず「人間の性は本質的には同じだ」という文化人類学者の言葉には重みがある。

18.アメリカの少女が家出をし、恋人の少年と一緒にニューヨークに出たはいいが、お金がなく、結局は少女が売春をして、生計をまかなうパターンが起こっている。また、少年と少女のセックスには避妊を考慮しない(キリスト教の影響)風潮があって、若年出産、流産、堕胎などが繰り返されている。(沖縄にいた頃、私のEX..wifeはアメリカベースキャンプに来ていた将校の家族と親しくなったが、娘が10代で妊娠してしまい、その娘の堕胎を沖縄の病院で行なうことに協力し、感謝されたことがある)。

 アメリカの性を、他国の性とあわせ、ここまで突っ込んで調べ上げた例はあまりないだろう。ただ、ここまで書くのなら、アメリカ社会におけるエイズ問題、堕胎問題に関しても詳しく言及して欲しかった。

 日本には宗教からくる道徳観念がないため、年々、性を体験する年齢が低年齢化している。親にも確固とした考えがない。ただ、セックスで被害者になるのは必ず女性のサイドであり、場合によっては命かげの出産ということも起こる。若いときにセックスを経験することもいいし、複数の異性とセックスをして性技や違いを学ぶのもいいけれども、、避妊を学び、病気をもらわぬことが大事だ。一時の快楽のために、生涯を妙な病気で棒に振るなどは愚の骨頂。現実問題として、日本社会にはエイズが増えている。若いときの妊娠、出産は本人にとっても生まれてくる子供にとっても、決して良い結果をもたらさない。

 日本社会もホモに対して大らかになったというべきか、TVでホモが登場する場面が年々多くなっている。私個人は気持ちが悪いと思うし、さわられたらぶん殴るだろうが、社会の風潮として、ホモ、ゲイを許しはじめている気がする。ただ、日本ではまだホモに不慣れというか、忌避感が強くあり、かれらが映像に映ると、ハンマーで頭をかち割りたくなる人間も一方で存在することは忘れないほうが身のためだ。


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