アルゼンチンババア/よしもとばなな著

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「アルゼンチンババア」 よしもとばなな著  幻冬舎刊
2002年単行本初出  2006年8月文庫化初版  絵:奈良美智

 

 タイトルがなんとまぁ私にとって魅力的であったことか。

 この作者の作品を読むのはこれが初めてだったが、著者を紹介する解説のなかに「作品は世界各国語に翻訳されている」とあり、期待をふくらませてページを繰ったところ、文体が稚く、拙いことに一驚、読後に本書のなかで最も難しい文字は「結界」(仏教で使われる言葉)だったなと記憶に鮮明に残るほどで、「まさか」との思いが胸に張り詰めた。あらためて、ページをもどして著者紹介を読みなおしてみると、本書が著者38歳時の作品であり、過去に数々の受賞に輝いていることが判り、納得できぬまま不思議な気分に陥った。

 けれども、文章全体が少なく、使われている紙が厚いこともあって、漫画を読むような印象で、あっという間に読みきってしまった。途中で飽きることも、退屈することもなかった。

 だから、「これは小説というより漫画だ」というのが、読了直後の感想。といって、不快感は皆無。「なぜ?」との疑問がしばらくは私をとらえ、考えこんだ末に了解したことは、場面ごとの生き生きした登場人物の言動、周辺環境の色彩が映像的な印象となって脳裏に刻まれたことに原因があることに気づいた。

 あらためて内容を頭のなかで蘇らせてみると、それぞれのシーンが視覚に、聴覚に、嗅覚に、とにかくあらゆる五感にある種の質量をもって響いていたことに思い至り、タイトルの奇抜さとはもとより、忘れ得ぬ作品となったことだけは、どうやら確かなことに思えた。

 また、同じ著者の作品のなかに「不倫と南米」という本があり、この著者と南米との繋がりに深いものがあるのかと想像したが、当否は判らない。


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