インド人はなぜゼロを見つけられたか/門倉貴史著

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「インド人はなぜゼロを見つけられたか」
門倉貴史(1971年生)著
小学館文庫より2007年2月に文庫化初版

 

 本書は「タイトルにある、なぜインド人がゼロを発見できたか」については全く触れていず、内容はあくまで、インドの経済状態と今後の将来性について、現今取りざたされているBRICSの他国や先進各国との比較において、統計や数値をもって説明、解説を加え、インドへの理解を深めさせようとの目的で書かれたもの。

 最近、ときどき、タイトルが内容をまったく表していない本書のような例に遭遇するけれども、これって、やはり詐欺的な手法だと私は思うし、書籍を販売するという崇高なビジネスという観点からいえば醜悪な姿勢だと思う。

 本書の内容は決して悪くないし、時宜にも合っている。内容をそのままタイトルにしたほうがむしろ清潔感とともに、販売にも寄与したのではないか。

 ただ、「書き出し」で著者が「日本人はコピーはうまいが創造力がない」と自己批判めいたことを語っているが、コピーは日本人の特許ではなく、西欧を含め、世界のどこにでもある。

 また、「ペリー来航後、日本人は西欧とわが国との間に横たわる科学と機械の知識に関する差に茫然自失、急遽留学生を西欧に送り込み、遅れを取り戻すことに腐心した」とあるが、当然だろう。

 「インドの人口は11億、中国は13.2億、インドの人口調査は十分ではないため一説にはすでに中国を凌駕しているといわれる」とあるが、人口調査がいい加減なのはインドだけではなく中国も大差ない。ことに、「一人っ子政策」が採られた間、女の子が生まれると登録をせずにいたり、隠れて二人以上を生んだりという、「一人っ子政策」に対抗する手段を庶民が全国規模で起こしたということもあり、「いまや中国は15億、インドは13億」という説まであり、このほうが正鵠を得ているのでは。

 いわゆる「BRICS」を選んだのは、アメリカの投資会社、ゴールドマンサックスだが、選択のポイントは(1)労働力(若い人口)、(2)国土の広さ、(3)地下資源の有無だったという。「インドは労働力は豊富」だと強調しているが、路上生活者が溢れかえり、観光客に金をねだる風景は見るに耐えないものがあり、金をねだって群がる数も半端ではない。

 また、インドには数多の方言があり、国民のほとんどは英語で相互意志を確認し合う、英語を軸にまとまろうとする意思があるのに比べ、日本人は英語に弱い。言語の仕組みそのものが違うのだから、仕方がない。

 「日本滞在の華僑は48万強、印僑は1万5千、比べものにならないが、これは過去の歴史の差であろう。

 日本による円借款、各国供与額の2004年の内訳:

 インド=1345億円、インドネシア=1,148億円、トルコ=987億円、中国=859億円、ベトナム=820億円、ルーマニア=287億円、スリランカ=279億円、ウクライナ=191億円、ウズベキスタン=164億円、アルメニア=159億円、バングラデッシュ=113億円、カンボジア=73億円、エジプト=57億円、ラオス=33億円、アルジェリア=29億円。

 インド人の自己主張の強さに辟易することがあるが、これはかつての宗主国イギリスから教えられたものだろう。とはいえ、識字率が中国以下の61.3%というレベルで、その上、カースト制度が今なお社会を支配している国であり、拡大する格差をどう抑止するかが課題。

 「インドが金(ゴールド)の消費量の面で世界一」だということは、私も最近知ったことだが、世界全体の金のストックが714万5000トンであり、インドの蓄積量が9、000トンと、他の国を圧倒している。

 金の消費量順に以下、国名を並べれば:

 1)インド21.53%、2)米国12.89%、3)中国8.82%、4)トルコ7.20%、ちなみに日本はたったの1.6%である。

 この理由は数学者の藤原正彦氏(数学教授、「国家の品格」の著者)が書いていたが、ダウリーという名の持参金に関係し、娘を嫁に出すときは金をもたせるのがインドのしきたりの一つになっていて、これがいまだにインド社会の足を引っ張る素因をなしているとのことだった。

 発展途上国では、外資経営による企業へのストライキが頻発するが、ほとんどは甘えである。経営が外国人であるがゆえの「相互扶助」という観念がいつのまにか消失し、「たかり」に変貌する可能性があり、とくに日本人はおとなしいために、舐めてかかられる可能性がある。その意味では、私見だが、インド、中国、ブラジルに限らず、ヴェトナム、タイ、台湾、マレーシアにまで拡大して、今後のビジネス展開を考えておいたほうが得策だと判断する。

 「今後の経済を支える最大のものは石油よりも水である」という作者発言はポイントを突いている。

 確かに「インドは世界のIT大国ではあるが」、それによって潤っている国民は現時点では僅かなパーセンテージに過ぎない。多くの問題を抱えているという点では中国と大差はなく、両者が今後どう発展を継続できるのか見もの。


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