ウェンカムイの爪/熊谷達也著

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 書評:ためいき色のブックレビュー-ウェイン

  「ウェンカムイの爪」  熊谷達也(1958年生)

  1998年1月 集英社より単行本 初版

  2000年8月25日 同社より文庫化初版 ¥400+税

 本書は作者が新人賞を獲得した作品であり、2009年7月31日に書評した「漂泊の牙」は2000年に単行本で出たもので、首記の作品に2年遅れて上梓されたものである。

 「ウェンカムイ」とはアイヌ語で「人喰い熊」を意味し、作品は羆(ひぐま)に襲われる恐怖をはじめ、北海道で羆を研究するチームの限りなく実態に近い状況が活写され、迫力もあり、読み応えがある。一方、過日紹介した「漂泊の牙」は狼を対象としたもので、作者が好んで動物を対象にする作家であることが理解される。

 本書が前作に負けず劣らず、面白いこと、あっという間に読みきってしまうことは確かで、野生の動物に関する研究がいい加減でないことを示唆している。また、野生生物のみならず、地球上の動植物を対象とする書物には私自身はいつも抵抗なく入っていく。

 実は、羆に関する小説としては過去に、吉村昭の「羆」が1971年に、「熊撃ち」が1979年に上梓されており、いずれも当時引き込まれて没頭した。

 「解説」にもあるが、動物を対象とした物語に絞っていけば、書ける対象が多くはないはずで、その限界を作者はどう打開していくのかという興味はある。


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