ウルルの森の物語/百瀬しのぶ著

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ウルルの森の物語

「ウルルの森の物語」
百瀬しのぶ(1967年生/おくりびとの作者)著
帯広告:君に出会えた奇跡、家族の絆を描いた感動物語
2009年10月11日 小学館より文庫化初版

 

 本書は映画が先にできていて、その脚本をベースに著者が新たに書き下ろしたものとの注釈があるが、それが理由か否かは断定できないものの、切ない物語を扱っている割には切実感が稀薄。

 小学生の兄妹は母親が心臓の病気で入院したため、夏休みを北海道で過ごすために旅立つ。この二人が本書の主人公。

 飛行機から各駅停車の電車に乗り継いで到着したところには、母親と離婚した父と、その妹、つまり叔母がいる。

 父親は弱っている野生動物をケアし、治療後は自然に還す仕事をしている。

 ある日、叔母と一緒に出かけた森で、二人の子供は偶然傷ついた仔犬を発見し「ウルル」と名づけ、連れ帰って懸命にケアをする。ウルルは日に日に二人に慣れ、一緒に散歩ができるまでに回復する。

 ケアの途次に、この仔犬が日本では絶滅したとされる狼の特徴を存分に身にしていて、その筋の学者を含め、研究対象としての扱いに変化していくことに二人の子は違和感をもち、その狼の子をその母狼のもとに還してやることが出来れば、自分たちの母親の心臓の病気も治るという信念をもち、狼の子が別の場所に隔離される寸前に二人は狼の子を連れて森の奥へと逃避し、母狼探索を敢行。

 主人公が子供であり、ウルルと名づけられた動物が狼の子であることが本書を魅力的なものにする決定打になっている。この登場者配置には誰も抗し得ない。

 映画は見ていないが、おそらく感動的なラストシーンであっただろう。


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