カラダで地球を考える/中野不二男著

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「カラダで地球を考える」  中野不二男(1950年生/ノンフィクション作家)著
副題:「完全なる代謝」という発想
帯広告:地球の健康診断/食べて出すーカラダの物質収支から地球の体調をさぐる
2006年9月20日  新潮社より単行本初版
¥1500+税

 

 「生物も、植物も、地球上の環境も、完全なる代謝を行い、それぞれ収支決算はぴたりと合っているはずだ」という発想から、最も身近に存在する自らの身体をベースに本書はスタートする。

 むろん、その発想は、万物は代謝のなかで生きており、地球環境も大気圏のなかにおける代謝(海面蒸発から雲が湧き、降雨があり、水が高いところから低いところに流れ、陸上生物の生命と植物の生命にかかわる)を行なうことでしか生きられないという生の条件を見据えてのこと。

 「人間は呼吸によって酸素をとりこみ、二酸化炭素を排出する循環を不断にくりかえす」が、この作者の場合、自らを実験することによって、毎日596リットルの酸素を消費し、500リットルの二酸化炭素を吐き出していることを突き止めた。大気中に占める酸素の量はおよそ21%だから、呼吸総量は17,029リットルで、要するに、必要酸素を消費するために、28倍もの空気を吸い込んでいる計算になる。

(空気の組成のうち窒素が70%を占めるため。ただし、人間は純酸素を吸い続けることは出来ない。個人により酸素耐性には差もある)。

 「人間が出す二酸化炭素の総量は呼吸によって出るもののほかに、体内で食べたものが燃え、エネルギーと化したものから排出されるものを含んだものである」

 「動物は、人間を含め、体のサイズに占める肺容量の割合はほぼ一定している。健康体の生物の呼吸周期は1.12 x (体重の0.26乗)」

 「生物が大気中に排出した二酸化炭素は植物が吸収し、光合成によって酸素を大気中に放出する循環を行なって、収支を合わせてくれる。ただし、光合成のできない夜間は植物も二酸化炭素の吐き出す量が増える。冬期の日照時間の減少は植物の二酸化炭素吸収量を減らすが、、光合成を促すには葉が重ならないように注意してやる必要がある」

(植物には自らの体形を整え、葉が重ならないように伸びる性質がある)。

 「富士山頂の酸素の量は本来ならその海抜、3,776Mに相当した量があるはずが、実際には4,000Mの高山と同じだった。原因はバクテリアの活動で、驚くほどの酸素を吸収し、二酸化炭素を吐き出していた」

 「観葉植物に音楽を聞かせると、よく育つ」という話があるが、スピーカーから出る音波が風となって植物の葉に均等にぶつかり、代謝運動を促すことはあり得る」

(植物に話しかけると、よく育つという説はどうなのだろう?)

 作者は特別に構築した各地の「ミニ地球」施設での実験の結果を詳細に紹介している。

 「炭素量を的確に把握するには、動物の出すガス(おなら)、ゲップ、大便、小便などもすべて回収し、分離装置で処理し、分析しなくてはならない」

 「日本の人口推移」

 弥生時代                              60万人

 古墳時代を経た8世紀初頭                     450万人

 平安時代 8世紀後半                       550万人

 慶長時代 16世紀                       1027万人

 江戸時代 18世紀                       3000万人

 現代    2003年10月                 12760万人

 現代のピーク    2005年                12775万人

 本書では、人口と食料の関係についても懇切に触れている。日本の自給率は先進諸国のなかでも極端に悪く、わずかに28%、イギリスは109%、オランダは25%、スイスは59%、イタリアは84%、ドイツは111%、アメリカは119%、フランスは186%、カナダは120%、オーストラリアは198%。(いずれも穀物の自給率)

 総じて、作者のこの難しい問題への取り組み姿勢はきわめて真摯、大上段に振りかぶることもなく、事態を的確に、かつ冷静に見ている。


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