カーニバルの少女/ドロシー・ギルマン著

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「カーニバルの少女」 ドロシー・ギルマン著  柳沢由美子訳
原題:Carnival Gypsy 1950年に発表された作品
集英社文庫 2005年11月文庫化初版

 
 文章のタッチが軽く、インパクトが弱いという印象は免れがたいが、その事実は現代の日本女性作家の作品と比較しても、悪くいえば烈しさのない、良くいえばナイーブな感覚をベースに、読み手の心を慰め、温めてくれる、現代風にいえば「癒しの小説」だという印象。

 問題はこの作家がアメリカ人なのか、カナダ人なのか、あるいはジプシーなのか不分明で、著者紹介もなく、解説でも触れていないことで、それが不満といえば不満。とはいえ、原題に「Carnival Gypsy」とあるから、家系はジプシーだったのかも知れない。

 不分明といえば、カーニバル、サーカス、ボードビルの三種に対し、いずれにも明瞭な識別ができるような説明がなかったことで、ボードビルにだけ、「歌、踊り、曲芸、寸劇、など客席演芸」だとあり、いずれにしても遊園地とアミューズメントパークを一緒にしたようなものだとあるから、いわゆるショービジネスを主体とする、戦前、戦後に、日本各地を巡業してまわったサーカス団を想定すれば、それほどの相違はないように思われた。

 主人公の少女は15歳だが、唐突に、母親をパートナーに、この特殊な世界のオーナーとなり、カーニバルを育てていく過程が描かれているのだが、主人公のあまりの穏やかさ、少なくとも米国人にはない常識をもち、むしろ東洋的という以上に、かつての日本的な人情が窺える点が心に響く。私が知っているアメリカンの15歳ギャルはもっと自己主張するし、性格にも激しいものがあり、本著作の登場人物とは異質の人間性に触れている感が強かった。

 北米大陸に居住する作家にこのような作品を書く女性が存在することに、むしろ驚愕した。


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