キスまでの距離/村山由佳著

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「キスまでの距離」 村山由佳(1964年生)著
副題:おいしいコーヒーのいれ方1
集英社 1994年単行本初出
1999年6月文庫化

 

 作者30歳時の作品だが、同作者の作品を読むのは初めて。

 書店でタイトルと表紙の絵に惚れて、買ってしまった。

 「恋愛小説を一気に読ませてしまうことを念頭に書いた」と作者が「あとがき」でいってる通り、きれいにはまって、数時間で読みきってしまった。かといって、ストーリーにしても、登場人物にしても、いずれも鮮明度が濃く、読後も脳裡に焼きついている。

 「あとがき」には、普段は漫画を読んでいる世代が本書から連続して「おいしいコーヒーのいれ方」との副題のついた作品を読み継いでいるとあるが、スートーリーが漫画と優劣をつけにくいほどのスピードで展開することに関係しているように感じられる。

 あまりにも爽やかすぎることくらいが難点というより、引っかかるところで、達者な著者という印象。とはいえ、こうした書き方に徹するのは、活字から離れている若年層を活字を読む方向に目を向けさせようとの努力の結果とも考えられ、このような作家の誕生は時代を背景にした現実的な存在として賞賛したい。

 「どんなに外国語を学んでも、その人の語彙は母国語を超えることはない」というのは真実で、漫画に出てくる語彙の少なさを好んで読む日本人がいずれ海外との論争にも議論にも「Out Of Question」といわれかねないのが現状、若者に読書の習慣をもたせる努力は今後とも傾注して欲しい。

 最近、たまに若い著者の作品を読んでるおかげで、若年層が遣う言葉にもかなり慣れたつもりでいたが、会話のなかで「わずらわしいだけじゃん」なら解るが、「わずらっこしいだけじゃん」にはこけてしまった。ひょっとして、方言かとも思い、作者の出身地を見たら東京都とあり、この言葉が東京で遣われていることを知って、言葉の急激な変化にあらためて驚いた。

 今後のさらなる活躍を祈る。


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