サンダカン八番娼館/山崎朋子著

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sandakan8ban
「サンダカン八番娼館」
山崎朋子著 文春文庫

 
 幕末から明治にかけて、日本がいかに貧しかったかがよくわかる。

 当時、日本女性が東南アジア各地に女衒(ぜげん)の手によって女郎として売られたが、この本は現マレーシアのサバ州(ボルネオ島)、旧都サンダカンに売られていった女のノンフィクション。

 会話が九州の天草弁という点、時代が戦前である点、書き手が半素人という点、使われている言葉に死語がある点、これら四点がかえって読者をつまづかせ、と同時に、強い印象を与えている。

 日本が日清、日露、第一次大戦に勝ちぬいた歴史は、むしろ奇蹟に近いもので、歴史の裏舞台には測り知れない貧困と悲惨が明治を過ぎ、大正、昭和へと移ってなおあったことを窺わせる。日本人の世界認識の甘さ、愚かさがしみじみ胸にしみてくる。

 私はサンダカンにおもむき、娼婦を乗せた船が入った港、そして彼女らの墓場を実際に見てきた。
 遠い歴史が如実に偲ばれ、胸を震わせる。


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