ジャポンスコ/ヨゼフ・コジェンスキー著

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ジャポンスコ
「ジャポンスコ」 ヨゼフ・コジェンスキー(ボヘミアン・1847年生)著
副題:ボヘミア人旅行家が見た1893年の日本
訳者:鈴木文彦(チェコ語からの翻訳)
1985年 サイマル出版より単行本
2001年2月1日 朝日新聞社より文庫化初版
¥660+税

 
 本書はオーストリア・ハンガリー帝国時代に、一人のボヘミア人が世界一周旅行を企て、旅先の印象を綴ったものだが、ハワイから横浜港入りして1か月弱を日光、東京、箱根、静岡、名古屋、琵琶湖、京都、大阪、長崎と周遊した日本旅行記を全三巻のうち一巻を充てたもの。

 江戸時代に日本を訪れたり滞在したりした外国人(例・米国初代駐日大使ハリスやスェンソンやシュリーマンやハワイの王様)などによる旅行記、滞在日記に比較し、ぎょっとさせる指摘、批判、憐憫、驚愕などのない平坦な内容になっている。

 理由の一つは、著者が日本への憧れが強く、訪日前に日本に関する文献や資料を漁って、かなりの分野において一定の知識が既にあったこと。第二に、明治26年といえば、日清戦争後であり、日本政府は先進国から国家のあり方について、軍事はもとより、通信、教育、政治、警察、報道、交通手段、医療、法律などを学んで、江戸期とは雲泥の相違があり、先進諸国に近い様相を呈していたことがあるだろう。

 そうした内容からあえて記憶に強く残った点を以下に記す。 (  )内は私の個人的意見。

1.著者の友人が横浜に在った総領事館に勤務していたが、「頻繁に起こる地震が耐え難い」と嘆いた。

2.日本人男性の平均身長は150センチ、女性は140から145センチで、180センチある著者の目からは小人のように見えた。

 (日本人の平均身長が低いのは外国人との比較において現在でも同じ。長期におよぶ正座の習慣や和式トイレ、さらに米のほか海産物に偏った食生活にも原因があるだろう)。

3.日本人は特別のサービスを提供しても、それに対する心付けを受け取ろうとはしない。

 (昔の日本人はアンダーテーブルに強かった)。

4.当時の一流ホテルは、横浜グランドホテルと帝国ホテル。

5.甘藷は200年前に薩摩の大名が琉球島の王より受領、以来、日本国内ではサツマイモと呼ばれるようになった。
 (青木昆陽がサツマイモを普及させた時期より明らかに早く、薩摩の賢しらさにあらためてムカつく)

6.日本の芝居には不協和音が多く、それに伴う役者の口にするセリフが神経を苛立たせる。(言葉が理解できないことも苛立ちを助長したであろう)

7.男女の役者が同じ舞台で一緒に演技することが長期にわたり禁じられてきたことが歌舞伎に女形を生んだ。

 (のみならず、宝塚には男役を生んだ。老年の男性が白粉を塗りたくって厚化粧をし、女形を演じたり踊ったりする姿は私も好きではない。私は京都の舞妓も、芸者も嫌いだし、したがっては父親と違って歌舞伎も嫌い)

8.日本人はミルクを飲まない。肉を食べない。チーズ、バターを食べない、パンを食べない。

 (こうした食習慣が日本人に脚気という病気をもたらし、多くを死亡させた)。

9.日本人が仏教や神道をほんとに信じているかどうかは疑わしい。また、別の宗教がこの地に信徒を獲得するのも難しい。日本人は概して信仰について無関心である。

 (日本人の宗教はご利益主義)。

 本書は日本に関し一貫して好意的に書いていることが印象的だが、数多く掲載されている写真は明治期の日本の景色と日本人の姿を映していて、想像を掻き立てられる。また、作者はフォン・シーボルト並みに動植物への関心が深く、知識も豊富で、それらについても詳述しているのが記憶に残った。


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