ジャージの二人/長嶋有著

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ジャージの二人

「ジャージの二人」 長嶋有著
2003年3月号「すばる」初出
2007年1月 集英社文庫化初版

 

 三度結婚に失敗した父と、会社の上司と思い切り不倫をしている妻を持つ息子が二人で、軽井沢にあるぼろっちい別荘で暮らし、そこに周囲の友人が訪れたり、妻がやって来たり、姪が来訪したりする、正直いって「ありきたりすぎる、日常的で、平凡で、人を驚かせるところの全くない小説」でありながら、著者は誠実すぎるくらいに、淡々とした筆を運びつつ、世代によって異なる精神への理解がスムーズで、そういう個性がなんとなくしんみりさせ、現今の若者にない異質性を感じさせる。

 こういう作家が将来どのような扱いを受け、人口に膾炙するのだろうかと、そのことに関心も興味も惹きつけられた。

 なかに「永久(とわ)の愛とは10年くらいなら、永久になり得るけど、それが50年70年となると、嘘っぽくなる」という感慨はこの年代の作家の洞察としては鋭すぎ、男と女の出遭いなどはほんの弾みがきっかけでしか成立しないことを認識しているという印象があり、文体にも、文章にも、構成にも、力みもないし、奇を衒ったところもなく、きわめて印象の良い小説。


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