チャタレイ夫人の恋人/ローレンス著

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チャタレー夫人の恋人

「チャタレイ夫人の恋人」
 ローレンス作  伊藤整訳  新潮文庫

 

 むかし読んだ本を再読。

 これがかつて禁書となった著作かと唖然とした。

 本書の教えるところは一つ、「性」のことに尽きている。

 人間にとって性がいかに根本的な部分を占めるか。 性からはじまった関係が愛へと変貌する過程がそのあたりを暗示する。

 が、それ以上にむかしから日本の男たちがいっていた「一盗、二婢、三妾、四妻」を想起させるところが本書のポイントのように思われる。 かつて男たちは「一に人のものを盗む、二に婢(かしづいている女)を犯す、三は妾とやる、さいごに妻と寝る」と、セックスする相手を興奮する度合いでランクづけした。

 「いっとう、にひ、さんしょう、よんさい」と読む。

 このなかの「二婢」が本書から伝わってくる。

 主人公のチャタレイ夫人は貴族の奥様であり、旦那が戦争で下半身不髄となったあと性に飢えていた。そして、相手となる男は汗の匂いがぷんぷんただよう野性味たっぷりの森の番人。奥様と使用人の関係だ。女からみてもランキングに差はなさそうなことに、いまさら気づいて、また唖然。

 辞書によれば「婢」は古語扱い。女の召使いの意味だが、ほかに「はしため」という言葉がある。漢字では「端た女」と書き、「個人の家で家事を手伝う女」つまり「女中」を、(現今なら「お手伝いさん」を)意味する。 いずれも死語に近いが、むかしそういう女を主人がむりやり犯したり、はらませたりした歴史がある。

 「女は犯されるために存在する」と高言した人もいた。

 本書は原書(英語)でもむかし読んでいる。

 なかに「Silken haired cunt」という言葉が出てくる。要するに「絹のようなヘアーで覆われた女性性器」という意味だが、「Cunt」(カント)という言葉は、同じ女性性器を表すVagina(ヴァジャイナ), Vulva(ヴァルヴァ)と異なり、関東で使われる「お」ではじまる四文字言葉、(関西、北陸、沖縄では三文字言葉)と同様に悪いイメージが強く、一般的な会話では使われない。

 アメリカでは、仲間内でなら「Pussy」が頻発する。ネコじゃらしに使う柳の穂を本来は意味するが、転じて「オニャンコ」から女性性器のことを指す。

 もっとも、現今では女性作家が四文字言葉を平気で使っている点、時代の変化を感じないわけにはいかないし、隠微であるべきものが目の前に曝されると、隠微であることへの憧憬も、隠微であるがゆえに訴える想像力も不要になってしまい、日本人的かもしれないが、情緒というものが次第に失われていく感が否めない。

 あらためて読んでみたが、この内容でことさら発禁処分されたり、部分的にでもカットされるような内容ではない。現代から見れば、ごくありふれた男女のあり方の一つのパターンでしかない。


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