ドキュメント女子割礼/内海夏子著

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ドキュメント女子割礼

ドキュメント女子割礼
内海夏子著  集英社新書

 アフリカの一部ではいまでも女子割礼、つまりクリトリスのカットも、陰唇(大小あわせ)のカットも行われているという。その悲惨を描いたドキュメント。

 インドネシアに6年住んだことがあるが、イスラム教徒の国だから、割礼は男子にも女子にも一部の地域に残っている。男子は包皮をカットするだけだが、女子はクリトリスをカットする。

 ちなみに、バリ島のヒンドゥー教徒は糸切り歯をカットする「ポトン・ギギ」という儀式があるが、いまではヤスリを軽くあてるだけになっているが、アフリカの女子割礼は簡素化されぬまま今日なお昔通りに無惨なやり方で行われている地方があるという事実。しかも、その無惨な旧法に固執するのは、男性ではなく中年以上の女性であり母親だという。

 衛生状態の必ずしも良くない場所で、良くない器具を使い、消毒などの医療行為もお粗末なため、傷が膿んだりすることが多く、大変な思いをさせられるケースも稀ではないという。

 一部の人間には迷信にも思い込みにも深いものがあるようだ。とはいえ、女性の陰部割礼は一時期、西欧諸国にも存在したことを忘れてはならない。ユダヤ人からはじまってイギリスにもアメリカにも伝播した歴史がある。受胎は女性の性が感ずるオーガズムとは関係がないという理屈をもって。また、男子の包茎割礼は亀頭を丸出しにすることによって射精を早め、女性に快感を与えぬよう配慮されたからだという。

 女性に対するこうした強制はいつの世でも男性が考えだしたもので、同じレベルとはいわないまでも、日本のお歯黒、アイヌや琉球の既婚女性にあった刺青、中国の纏足(てんそく)、十字軍時代の西欧の貞操帯(ロックされていた)などなど、男どもは自分は浮気するくせに、女房の浮気は許さなかった歴史がうかがえる。

 女子の割礼に匹敵するのは男子の「宦官」(かんがん)。高校時代、「宦官とはなんですか」と漢文の先生に質問したことがあるが、返ってきた答えは「チンポがねぇんだよ」だった。つまり、中国では宮中(日本ならさしずめ大奥)に入る男はすべてペニスを切断されたのだ。トルコでも「オスマン・トルコ」と呼ばれた時代、パレスのハーレムに入る男は、スルタンの命により、やはり同じ処置を受けたという。医療的に適切な処置を施されなかった時代だから、ときに陰部が腐敗もし、完治するまで大変だったという話も聞く。

 中国で「史記」を書いた司馬遷も宦官だったが、ために女には見向きもせず、精力のすべてを歴史編纂に充て、稀有の遺産を後世に伝えてくれた。


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