ニッポンの刑務所/外山ひとみ著

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「ニッポンの刑務所」  外山ひとみ(写真家、ジャーナリスト)著
帯広告:初めて明かされる塀の中の真実/見えてきたのは今の日本
2010年3月20日 講談社現代新書初版 ¥800+税

 

 本書には作者が20年間をかけて取材した年月の重みに加え、ほとんど日本中の刑務所を訪ね歩いて取材したジャーナリストとしての意識の高揚、歳月をかけただけに的確な取材相手に遭遇し得た幸運とともに時代の変化がこの世界に強いた変容をも著作に盛り込むことが可能となったように感じた。

 なかから、面白いと思った部分と併せ、感じたことも併せ記したいと思う。

*明治に建設されて現存する「五大監獄」とは、奈良、千葉、金沢、長崎、鹿児島だという。ただ、西洋式刑務所の発想は下田奉行所に同時併設した牢屋敷で、これがルーツ。

 (というからには、アメリカ初代日本大使のハリスと関連があると見てよいのだろうか)

*最近の著しい傾向は、どこの収容所も過剰収容に陥っていること、外国人の受刑者が増えていること、少年や女性や高齢者の犯罪者の増加、身寄りのない者の犯罪の増である。

 *2009年現在、全国に27の刑務所が存在するが、受刑者はトータル62,756名、女性専用の刑務所は8箇所、少年専用は7箇所。

*用語の変化

 雑居房は共同室に、独居房は単独室に、収監は収容に。(監獄は刑務所に)

*外国人の犯罪者増加について/2008年の時点:

 中国人39%、ブラジル人とベトナム人各10%、韓国人とイラン人が各9%

*新法の施行後、塀の中にも格差が生まれ、不公平がまかり通るようになった。それは刑務所へ持ち込むことのできる品物の量が増えたことで、当然ながら、そこに貧富の差が生まれたからだ。また、量の増は刑務官の仕事をそれでなくとも忙しいのに、一層増やすことにもなった。

*一人の受刑者にかかる年間経費は人件費を含め、平均270万円、税金で充当される。

 (年金を270万円も貰えない老齢者はごまんといるのに、反社会的な行為をした人間に対しこの金額が提供されるということですか? 受刑者が増える一方で、収容所が足りず、どこもが過剰収容を受けるしかない状況だというが、日本の司法関係者が未決囚をいつまで経ってもはっきりさせない司法官僚特有のモタモタがあるし、死刑が決まった犯罪者にこれまたいつまで経っても処刑執行しないふんぎりの悪さがある。てきぱきとすることで、経費は軽減できる。もちろん、ミスを犯して人権問題になることを避けたいとの配慮は理解できるけれども)。

*2003年6月に「国際受刑者移送条約」が各国間で締結された。外国人犯罪者が自分の国に帰国して刑務所に入ることが可能になったということだが、すぐ帰国を希望するのはイギリス人、アメリカ人、カナダ人、オランダ人、韓国人で、先進国ばかり、また韓国人を除き受刑者そのものの数が少ない。

 概して、後進国の受刑者は日本の刑務所での作業報奨金が自国の通貨パワーに比べ高いので、日本で受刑し、期間いっぱいまで働き、報奨金を持ち帰りたいという希望者が多い。

*女性受刑者:1974年には811名だったのが、2006年には4452名と急増。

 女性の社会進出が犯罪増加に繋がったと思われる。女子刑務所はどこも過剰収容状態。

 外国人女性受刑者:2008年は23か国で、トップが中国人の60%、以下、韓国人、フィリピン人、タイ人、ベトナム人、台湾人。(彼女らの大部分は売春による犯罪)

(日本で女性の犯罪が増加した理由は社会進出と核家族化に並行して起こった育児放棄や児童虐待もあるだろう)

*日本最大の刑務所は府中刑務所。

*100万人の初犯者、再犯者を対象とした調査で約30%の再犯者によって約60%の犯罪が行なわれていることが判明している。

 再犯を食い止めるポイントは刑務所内での教育、出所後の受け皿と仕事である(著者はこの点を強調している)。

*少年犯罪:生命に関する犯罪60%、暴力犯10%、道交法違反14%、性犯罪16%。

*官民共同による刑務所運営は今後増えていく傾向にある。一時、名古屋刑務所で起こった受刑者虐待のようなことが起こらぬことを前提としている。

(アメリカでは民間企業が刑務所を建設して受刑者を受けることをビジネスにしている)。

 著者はマレーシア、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーなどバイクで1万キロを走破した経験をもつ女丈夫である。せっかくそうした体験があるのに、外国の刑務所事情をなぜ詳細を調べ書かなかったのか、もったいないという気がする。

 中国人受刑者が帰国しての刑務所入りを肯(がえ)んじないのは、中国の刑務所の待遇が恐ろしいほど悪いからで、取材に行っても、100%断わられるだろう。

 刑務所比べにおける第一のポイントは係官による待遇、次いでトイレ、そして、一つの部屋に収容される人数と熱帯地ではエアコンの有無だろう。熱暑の国、インドネシアなどの刑務所にはエアコンなどは設備されていず、小さな雑居房に他人の汗が鼻をつくほど多人数を押し込む。中国などでは警察官が犯罪者が生意気な言動をすれば横面を張り飛ばすと聞く。

 最後に、刑務所で受刑者が川柳を書いている。なかから、私が感じ入った句を2つ披露する。

 1.面会で妻の小言に安堵する

 2.物言えず、うなずくだけの15分


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