ビザンツ皇妃列伝/井上浩一著

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書評:ためいき色のブックレビュー-ビザン

  「ビザンツ皇妃列伝」 井上浩一(1947年生/大阪市立大学大学院文学研究科教授)

  副題:憧れの都に咲いた花

  2009年12月5日 白水社より単行本初版  ¥1300+税

 ビザンツといえば5世紀にローマ帝国から分離してから15世紀にオスマン・トルコに滅ぼされるまで1千年という歴史をもつ帝国であり、コンスタンティノーブル(現・トルコのイスタンブール)に拠を構え、時代によって領土は大きくも小さくもなりはしたが、当時の世界の中心であったことは史的事実。

 

 1千年のうち、比較的長期にわたり領有した土地は、現トルコ、バルカン半島、シリア、地中海の小島(ロードス島、キプロス島など)。

 ビザンツという言葉はビザンツ帝国自体がみずからそのように称していたわではなく、コンスタンティノーブルがビサンティウムと呼ばれていたためにビザンツと呼称されるようになったとは検索により知った。

 本書は1千年の歴史のなかから百年ごとに1人を、合計で8人の皇妃を選択し、その皇妃が生きた時代的背景、出身、毀誉褒貶、エピソードなどから皇妃の生き様を露わにする試みのもとに書かれたもの。選ばれた皇妃は人柄にそれぞれ格別の特徴をもち、同時にそれぞれの時代の象徴的な存在。

 皇妃について残されている文献や資料は皇帝に比べ僅かな量でしかないため、作者は限られた資料や、ときに秘史の類からも援用しつつ、真実の姿に迫ろうとするが、所詮は想像を逞しくして綴るほかはなかったと思われる。悪くいえば、「でっちあげ」であるが、推測の踏み台とした事象、関わった人間、残された資料などをどう扱い、どう使って実像に迫ったかが本書の面白いポイントであり、そこが面白く思えないと、この本はただの「ガラクタ」になってしまう。

 読後感としては、地球上、いつの時代も、どの土地でも、人間というのは性悪で、欲深で、自己中でありながら哀切な生き物だということを、本書を通して再確認することになった。


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