ファースト・コンタクト/金子隆一著

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書評:ためいき色のブックレビュー-コン

   「ファースト・コンタクト」 金子隆一(1956年生/サイエンスライター)

   副題:地球外知性体と出会う日

   1998年10月20日 文芸春秋社より新書初版 ¥720

 帯広告にはこうある、「地球外知性体は銀河系のどこかに必ず存在する。いま接触のための準備が着々と行なわれている」と。

 「ヒトがいま地球に存在する事実もせんじつめれば、地球で最初の自己複製分子が40億年以上にわたって積み重ねてきた「コピーミス」の結果にすぎず、社会生物学的な観点からいえば、ヒトもまた盲目的な自己増殖の欲求につき動かされる遺伝子の単なる動物にすぎない。」

 「ヒトはまた、たまたま直立歩行能力を獲得したことによって知性化したサルである」

 「生命の必要条件」:

1)外界との境界面を持つこと(体に表面を持つこと)

2)エネルギーなどの物質の代謝を行なう(食べて排泄すること)

3)自己複製の能力をもつ(生殖活動)

 「自己複製にはDNAと呼ぶ物質を遺伝子に使う。それは細胞のなかで二重ラセン形に組みこまれた巨大な分子。自己増殖の過程でときどき絶妙のペースで僅かずつ転写ミスを生じ、これが生物の進化の原動力となった。」

 「地球上の生物は全部で20種類のアミノ酸しか使用しておらず、これらはすべて分子構造が左巻きのL型」

 「地球は宇宙のなかで唯一無二の環境条件を備えた特異な天体などではない。地球で起こったことは地球と似た他の天体で起こっていても全く不思議はない。」

 

 地球外生命体である条件として、(1)惑星の表面でしか棲息できないのか、(2)酸素呼吸生活だけが高等生命に進化し得るのか、(3)水がなければ生命は発生しないのか、これらの棲息条件に関しても吟味、詰めが必要。

 本書にはいままで知らなかった金星についての説明があった。曰く、「金星は赤道半径が地球の95%、質量は地球の0.085倍と、きわめて地球に近いサイズの天体だが、今日の金星は二酸化炭素を主体とする分厚い大気に包まれ、表面での気圧は90気圧、表面温度は平均642度、水は一滴もなく大気圏上層部は硫酸の雲で覆われた、地獄のような世界となってしまっている。理由は金星は公転軸の半径が平均して地球の0.12倍しかなく、単位面積あたりで受ける太陽エネルギーが地球の1.91倍にもなるから。」

 以上までが私の関心を強く惹いた部分で、以後は太陽系の火星、木星の衛星であるイオ、エウロパなどでの生命体存在の可能性について云々するばかりで、そこにあまりに多くのページを割きすぎていることに呆れてしまった。

 それよりも、ハップル望遠鏡や、世界で質を高めている磁気を使った望遠鏡などの説明が欲しかった。さらに言えば、他の恒星を軸として自転、公転している惑星探査が現在ではどの程度進んでいるかも知りたかった。

 考えてみたが、書の内容が「脳」「「旅」「宇宙」などのことになると、色々な面で日進月歩となる。たとえば本書のように14年も前に上梓された書には全幅の信頼を寄せられるのかという疑問を持つべきだった。あるいは、読者自身が内容によって現在でも生きている説かそうでない説かを峻別できる能力があって読むべきだったという反省である。決して作者の責任ではない。

 とはいえ、上記した部分はいまも依然として事実であり信頼でき、作者のサイエンスライターとしての資質が光っている。  


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