フィンランド 豊かさのメソッド/堀内都喜子著

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「フィンランド・豊かさのメソッド」 著者:堀内都喜子(1974年生/フィンランドに留学後はフィンランド系企業に勤務)
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2008年7月22日  集英社新書初版 ¥700+税

 

 「フィンランドといっても、日本人一般には遠くて親しみのない国というイメージである」とは本書著者の書き出しだが、私にとっては本ブログでフィンランド人の著作を二度ほど扱っているし、子供のころから地理が好きだった私はこの国の地理的位置も首都がヘルシンキであることもよく知っていた。

 インドネシアのバリ島で仕事をしていたとき、電話線のない国柄、人々が携帯電話を入手しはじめ、そのメーカーがことごとくフィンランド製の「ノキア」か、アメリカ製の「モトローラ」であることを知り、日本企業はなにをしているのかと思ったことがある。

 「国土のサイズは日本から九州を引いたくらいだが、人口は500万人と少なく、国土の70%は森林地帯、10%は18万個の湖が占めている」そうで、「世界で最も政治腐敗や汚職の少ない国」という点ではイギリスに相似している。

(イギリス人が南欧の人に比べ、ことさら汚職を嫌うことは私自身がイギリス人とのつきあいのなかで学んでいるのだが、最近逆証する話が出てきて言葉がない)。

 フィンランドはスカンジナビア半島とロシア大陸に挟まれたロケーションから、過去にスウェーデンにもロシアにも領土侵略を受けた経験がある。

 「教育に関する成功原因として、教師の質の高さ、教師という職業の社会的地位の高さ、人口が少ないため生徒の数が少なく、クラス編成が教師にとって扱いやすい規模になっていて、落ちこぼれを防いでいることに併せ、同じEU諸国に比べ移民の流入が少ないことが治安に繋がっている」ことが挙げられている。

(日本も、かつては教師の地位は高かったし、尊敬に値する質の高さもあった。日教組などという組織化が始まって以来、質も落ち、教師が父兄に気を使わざるを得ない立場に追いやられ、教育の現場も質的に凋落(ちょうらく)したように思う。議員や公務員の数も給料も減らすことに異論はないが、教師に対してだけは現状の二倍の給料を払って人材を確保して欲しい)。

 「また、公立大学には授業料が不要、私立は存在しないから、毎年新学期はじめに一人あたり1万円ほど支払えば、保険も含まれるし、学生証がもらえ、医療が無料、公共交通機関の利用も学内での食費も半額になる。その他、美術館、理容室などいろいろなところで割引サービスが受けられる」。

 「一人暮らしの学生であれば、政府は住居手当金、勉強援助金、生活援助金も与え、返済の義務を負わせない。フィンランドは小さな国だからこそ、一人一人の能力が国の重要資産であり、不況を乗り越えるための要諦だとの認識がある。とはいえ、受験戦争といったプレッシュアや悲壮感はない。その理由は一定の時期に進学のための試験を受けるしか選択の余地のない日本と違い、いつでも本人の意思次第で受けることのできる教育環境が整備されているから」。

 「福祉制度がいきわたっているが、それは所得税、消費税など税金の高さでまかなわれ、税金の使途はガラス張りであり、教育環境を整えることのほかに、子供への養育手当て、保育所の完備など徹底しており、国民から文句が出ることはない」。

 「森林は所有者が誰であるかに拘わらず、誰でもが自由に入ることが可能。狩猟もできるし、キノコやブルベリーを採取することもできる。猟の対象はヘラジカで、フィンランドの美味の一つだが、ヘラジカと車の事故が年間に2800件以上もある」。

 フィンランドが北欧諸国に共通する福祉面での手厚さという点で代表的な国であることは知っていたものの、この国を留学先に選んだ著者の精神には感銘を受けた。白夜の国、冬の酷寒期は日本人一般の想像を超えるものがあるだろう。私の知人もスカンジナビア半島のスウェーデンに留学、北欧経済を学んでいる。


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