ポケットに名言を/寺山修司著

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ポケットに名言を
「ポケットに名言を」
寺山修司(1935年生/青森出身)著
角川書店発刊 1977年8月20日  ¥362+税

 
 この作家の著作に触れるのは初体験、きっかけは本年4月に書評した宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す」に寺山修司の詩が紹介されていたことによる。

 ひと通り読んでみて、私の心の琴線に響くような名言はなかったし、まるでヤクザといった作者の顔写真も気に入らなかったし、語っている内容は一貫して押しつけがましく、得て勝手というイメージだった。

 あえて、作者が選んだ言葉のなかから、まあまあの名言を挙げるなら:

1)本人作の「ふるさとの訛りなくせし友といて、モカコーヒーはかくまで苦し」

2)織田信長の「人間わずか五十年、化天のうちに比ぶれば、夢幻の如くなり」

3)マルキ・ド・サドの「堕落は快楽の薬味。堕落がなければ快楽も瑞々しさを失ってしまう。限度を超さぬ快楽なんて、快楽のうちに入らない」

4)スタンダールの「イタリア人の勇気は怒りの発作であり、ドイツ人の怒りは一瞬の陶酔であり、スペイン人の勇気は自尊心の現れ」

 といったところで、ほとんどは観念的な屁理屈を執拗にこねまわす西欧の哲学者の嗜好に偏っている。

 裏表紙に「本書ほど型破りな名言集はないだろう」との言葉があるが、私の印象は「いやな性格の人物」というのが作者に関するイメージであり、現代語を使えば、作者は「ムカつく」対象でしかなかった。

 名言に関する定義づけをしているが、独りよがりの感が強く、ろくでもない国内外の人物の言葉を採り上げ、名言と称して、一人悦に入っているだけ。

 ヤクザ言葉を挙げつらって楽しんでいるなど、詩人の風上にも置けない下種(げす)心理。いわんや、「ヤクザのスラングがもつ呪文性はクラークの「少年よ、大志を抱け」(Boys, be ambicious!)を上回っているなどという意見には納得できないし、奇を衒(てら)う変人的な姿勢と性格的歪みを感じただけ。「だいたい、てめえは、どの程度英語がわかってるのか?」と訊きたいところだ。


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