ミイラの謎/フランソワーズ・デュナン&ロジェ・リシタンベール著

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ミイラの謎

「ミイラの謎」
フランソワーズ・デュナン&ロジェ・リシタンベール(フランス人)著
原題:Les Momies
監修:吉村作治  翻訳:南條郁子
1994年11月20日 創元社より初版  ¥1300+税

 

 ミイラづくりの風習はエジプトをはじめ中南米の文化にもあり、広く関心の的となっているが、興味をそそられる最大の原因は5千年もの昔の人間の遺体を目にすることの不思議感と、自国にない奇妙な風習に対する好奇心であろうか。

 本書はエジプトのミイラを扱っているが、多くの写真が掲載され、解説を援用するという、いつもの手法が採られている。

 以下は記憶に残った部分:

*「ミイラ」という言葉はアラビア語であり、防腐剤の材料のことだったのが「防腐死体」を指すことに変わり、以後そのまま現代に繋がっている。

*一時期、ヨーロッパではミイラを粉末にして飲めば長寿を約束されるとの迷信が生まれた。

*19世紀、欧州にエジプトブームが起こり、多くの遺物やミイラを含め、欧州に送られた。

*イギリスはネコのミイラを輸入し続けたが、目的は農地への肥料だった。

*エジプトには300人ほどの「ファラオ」が存在したが、発見された墓は25基の岩窟墓と数十基のピラミッドであり、手つかずで発見されたものは数えるほどしかない。

*エジプトでは6千年前、人間の遺体は砂漠に穴を掘って埋めていたが、砂に水分が吸収され、埋められたときの姿で保存されることを知り、このことが死者の保護を意図して行なう動機となった。

*紀元前2060-1785、ミイラづくりの技術が向上。この時代につくられたミイラのほとんどが今日まで保存されている。

*エジプトの墳墓では、鴇(とき)、ネコなど、動物のミイラが見つかることがある。カルガ・オアシスのドゥーシュ村ではカエルのミイラが発見されているが、虚勢された男子のミイラの股間に置かれていた。ほかに手長猿、アヒル、魚、トガリネズミ、蛇、ワニなどがある。

*時代が下がるにつれ、ミイラ処理が雑になる。

*盗掘は早くから始まった。同時に墓の防衛も始まり、副葬品が増すにつれ、方法は巧妙になった。双方の知恵比べは初期王朝から古代エジプト文明の最後まで続いた。古代王国のファラオたちの墓の盗掘は難しかったが、中央権力が弱体化し、乱世となった第一中間期以降、墓は暴かれた。

*ラムセス9世時代、王権が衰退していたため、墓泥棒が横行。当時逮捕された泥棒の一人は「国民の多くが同じことをしている。みんな同じ穴のムジナだ」と言った。

*ミイラ研究には血液型のチェック、人体組織の顕微解剖、内視鏡検査による体内空間の監察、X線を用いたCTスキャンなどがある。

 体系的な骨の測定で判明したのは古代エジプト人の体にはハム族の血とセム族の血がほぼ半分ずつと、少量の黒人の血が混じっていること。この人種的特長は今日までほとんど変わっていない。

*「ミイラの造り方には上中下とあり、身分や支払額によって扱いが違った」とは、ギリシャのヘロドトスの言葉。

*女性の性器処理:女性の股間に皮をかぶせ、その上を二重、三重に包帯を強く巻く。来世への道すがら強姦されないようにとの配慮だった。

*史上ニつの大発見といわれるのは、(1)ディール・アル=バリ、(2)ツタンカーメン。

 (この二者が発見されるまでの過程がドキュメント風に書かれている)。

*リビア砂漠、カルガ・オアシス南端の小さな村で、1976年、フランス隊が700余のミイラを発見。どのミイラも保存状態は決して良くはなかったが、当時の庶民の姿を彷彿とさせた。

 「ミイラは好奇心の入り混じった恐れの対象。数千年も前に生きた人々のミイラとの対面は感慨深いものがあり、それがトトメス3世やラムセス2世のような有名人物であれば、3500年前にスリップしたような不思議な感覚を味わえるだろう」とは、著者が「博物館」について触れたときの言葉だが、正鵠を得ている。

 後で思い出したのはTVで紹介された中国の砂漠地帯で発見された女性ミイラ。これほど美しい容貌に恵まれたミイラは初めて目にしただけに忘れ難い記憶となっている。ほとんど崩れていない顔は鼻梁が高く、コーカソイドではないかと思った。


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2 Responses to “ミイラの謎/フランソワーズ・デュナン&ロジェ・リシタンベール著”

  1. withyuko より:

    ミイラ関係のお話を目や耳にすると、いつも思うのですが、昔からずっと、遺体を保存するということは生まれ変わり、来世を信じてたっていうことですよね?
    お坊さんが修行の仕上げ(?)みたいな形で即身成仏みたいな、水とか食べ物とか摂らないで衰弱死する形でミイラになるのは。。。あれは生まれ変わるんじゃなくて”仏様になる”ということですよね?
    本当に生まれ変わる。。。かどうかは生きてる人間には誰にも永遠に分からないことですよね。
    それにしても古いご遺体はやっぱり保存しても使い道はないし、気持ち悪いだけですよね。

  2. hustler より:

    即身成仏のミイラもテレビで紹介してましたね。
    ミイラの目的は土地によって違うみたいで、エジプトでは二度死ぬためとこの本には書いてありますが、中南米では生贄ですね。
    正直にいうと、「気持ち悪いもの見たさ」という側面が私にはあります。 

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