モンゴロイドの道/科学朝日編

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

mongoroidonomiti

「モンゴロイドの道」 科学朝日編
朝日選書 523  ¥1,365(単行本)+税

 

 気軽に手を出すと、使われる言葉の専門性に辟易して投げ出してしまう読者もいるだろうが、テキストブックだと諒解したうえでなら難渋感は薄らぐ。内容は画期的で、かつ、その気で読み進めるかぎり、おもしろい。なにせ、モンゴロイドは地球の長い歴史からみればほとんどあっというまに世界各地に拡散し、地球上のおよそ70パーセントに達してしまったのだから。生まれたとき尻の青いわれわれの仲間はいま世界各地に存在していると言い換えてもよい。

 本書は、明らかに研究者たちの地道な努力の成果であるが、我々の先祖の動きを知ることは、それはそれで壮大なロマン。しかも、モンゴロイドは武力に頼った戦闘を各地で展開した様子はなく、(多少のいざこざ、つばぜり合いはあったにせよ)、わりと平和裏に拡散していったことが想像される。(このあたりがスペイン、ポルトガル、イギリスの植民地拡大の、コーカソイドの優越主義に裏打ちされた、残虐行為とは異なる点)。

 各章のはじめに掲げられた、各地のモンゴロイドを写した古い古い写真が印象的。ことに、南米の端に住むモンゴロイドのおじいさんの容貌が沖縄の離島に住む猟師に酷似するのには、悠久の歴史を見た思いがする。後日、知ったことだが、南端に住む20人のモンゴロイド人に血液検査を行ったところ、全員がO型で、この血液型をもつモンゴロイドに勇敢、勇猛な人が多いらしいが、換言すれば「無鉄砲」な人が多いともいえるのかも知れない。

 以下は本書を通じて学んだこと、感じたこと:

 500万年前:人とチンパンジーが分離(ミッシングリンクが繋がった)。

 240万年前:ホモ・ハビリスが誕生

 150万年前:原人である「ホモ・エレクトス」がアフリカで進化し、ユーラシア大陸へと向かった。一方は欧州へ、一方は東アジアへ。

 人種という人類集団の確固たる分類単位は遺伝的な近縁図をつくってはじめて浮かびあがる抽象的な概念だという。

 (1)二グロイド(アフリカ人)、(2)コーカソイド(西欧白人、インド人)、(3)モンゴロイド(インド以東のアジア、南米、ポリネシア)、(4)オ-ストライド(オーストラリアのアボリジニ人、ニューギニアの原住民であるマオリ人)、(5)アメリンド(アメリカインディアン)

 惑星としては比較的小さな地球に先祖を同じくする人類に、以上のような、とくに肌の色、容貌の違い、体格の差をもたらしたものはいったい何なのか、生活習慣の違いその他があるにせよ、疑問が残る。

 モンゴロイドとコーカサイドの分離は5500年前、原因は氷河期に中国の南と西の山地が両者の交流を阻んだからという。

 1492年10月12日はコロンブスがアメリカ大陸を発見した日だが、それは同時に、アメリカ大陸にはるかな昔からすでに移住していたモンゴロイドがコーカソイドを初めて目にした日でもあった。むろん、その後は、コーカソイドによる侵略と惨劇がくりかえされ、いまやアメリカ大陸にいたモンゴロイドの大半はアメリンドと一緒に寄留地に押し込められている。想像だが、アメリカにいたモンゴロイドとアメリンドとの混血が広範囲にわたって生活していた可能性が強い。

 ソ連とアラスカを結ぶベーリング海峡は18世紀はじめにベーリングという人が率いる探検隊によって発見された。ベーリング海峡の最も狭いところはアラスカとシベリアとのあいだで約85キロ、深さは最深部で42メートルしかない。氷河期は海水面が低く、繋がっていた。かつて北海道はサハリンと陸続き、サハリンは大陸と接続していたため北海道にもマンモスの化石が出土している。

 ポリネシア人は基本的に東アジア人の遺伝子をもつ。

 高身長、筋肉質、骨太、肥満傾向は寒冷地適応タイプに似ている。海洋民族は海上の風による寒さに適応したから皮膚に脂肪が多いのだという仮説がある。またポリネシアの女性の初潮年齢が現代人の標準より早いし、思春期や成長期も長くなるのみならず、出産可能期間も長くなる。島から島へと拡散した時代、人口の増加は急務だったから。

(あるいは、これは私個人の推測だが、西欧のようなキリスト教的な束縛や呪縛がなく、性的におおらかだったからではないかともいえよう)。

 ポリネシアから三角帆を立てた舟で南米に達した人々と、アラスカから徒歩で米大陸を経由、南下して南米南端にまで達した人々とは先祖を共にするモンゴロイドである。

 日本の先住民は縄文人とアイヌ人だが、現代日本人と東南アジア人とは系統的には近い関係にある。ミトコンドリアDNAの抽出による「塩基配列の調査」によれば、日本人は2大グループによって構成される。古代の日本人をヤマト、アズマ、エミシと分類する学者もいる。

 日本人の起源は弥生時代から古墳時代にかけて確立した可能性が高い。

 アジア大陸から渡来した人たちを「グループ1」とし、縄文人と近世アイヌ人は「グループ2」とすると、「グループ1」の特徴に「九塩基対の欠失」がある。 同じ「欠失」は北米先住民のミイラ、オーストラリア先住民、アボリジー二とパプアニューギニアの高地人以外のすべてのアジア太平洋地域の人、とくにポリネシア人で高い頻度でみつかっている。 同じ先祖をもつ可能性についての言及。

 さらに、この「欠失」は韓国人、中国人、インドネシア人、台湾人と台湾の先住民族にもある。

 そして、この「欠失」はヨーロッパ人やアフリカ人ではまったく見られない。

 江戸時代の日本人も、さらに古墳時代の日本人までさかのぼっても、現代日本人とほとんど変化はない。

 一方、頭蓋の小変異/小さな異常からの調査によると、現代日本人とアイヌ人とは系統的にかなり離れているが、縄文人とアイヌ人とは近縁にある。

 「沖縄人とアイヌ人は近縁」との説はむかしからあったが、DNAによる検証によれば、沖縄の人はむしろ現代日本人に近縁だとの結論が出ている。(歯や骨の計測結果とは異なるので、断定はできないがとの断りつきながら。沖縄人は縄文人ではないかという憶測は当たっているかも知れない。かれらの特徴の一つに顎の発達がある。)

 渡来弥生人は朝鮮半島からと、中国北部からとが考えられる候補地。

 シベリア寒冷地のモンゴロイドの体形がずんぐり、顔が扁平なのは寒冷による凍傷を避けるために「表面積を少なくして、まぶたが厚く、腫れぼったくなったという説がある。朝鮮半島の人の目が一般に細いのも、寒冷の気から目を守るための必然的な進化だったのかも知れない。(基本的に南の住民の瞳は大きく、二重であるが、北の住民は目が細く一重が多い。

(たとえば、沖縄人の目はほとんど二重目蓋。かつて頬骨が広く張って、目は細く一重だった韓国人が最近ではTVで見る限り、タレントのほとんどは二重であり、頬骨の広く張っている人はいない。おそらく、韓国で流行しているという整形手術のおかげであろう)。

 「重複遺伝子」の点でみると、日本人は独自の小進化をとげてきた集団とみるのが妥当。

 アルコールに対する反応がモンゴロイド、コーカソイド、二グロソイドでおおきく異なる。

 下戸がいちばん多く存在するのはどうやら日本人らしい。ついで中国、朝鮮、フィリピン、ネグリート(インドネシア、フィリピン、マレーシア、マレー半島に拡散)、タイ、マレーシア、インドと続き、わずかに存在するのはアメリカのインディアン、スー族とナバホ族、ハンガリー人、パプアニューギニア人ではさらに減少する。 ハンガリー人、ウクライナ人、インド人にわずかながらも下戸が出るのはモンゴル帝国による支配の時代を通じてモンゴロイドのDNAが混入した結果であろうとの洞察。

 アジア人に下戸が多い理由は、西欧に比較し、アルコールが生活に必須の飲料であった時代が時間的に短かったかららしい。逆説的にいえば、もっと早い時期からアルコールを飲む習慣があったら、下戸はもっと少なかったかも知れない。ついでながら、牛乳を飲むと下痢するのは東洋人に多く、コーカソイドで少ないのは、白人のほうが牛乳を飲む期間が東洋人より長いからで、東洋では飲み続ける習慣がないからだという。ために、牛乳を消化する消化器官が欠落したからで、飲み続けている人には消化能力が継続している。

 以上のまとめ方では、本書をまとめた先生方の満足は得られないかもしれないと思うほど、中身は濃い。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ