ロシア史異聞/さとう好明著

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書評:ためいき色のブックレビュー-ロシア

  「ロシア史異聞」 佐藤好明(1952年生)

  2009年10月20日 東洋書店ユーラシアブックレットNo.145

 ロシア史を概観すると、

1.10世紀、キリスト教の国教化

2.13-15世紀、モンゴルによるタタールのくびき

3.17世紀初頭、ポーランドとリトアニア連合軍によるモスクワ侵略

4.17-18世紀、ピョートル大帝による改革

5.18世紀、エカテリーナ女帝による治世

6.19世紀初頭、ナポレオンとの戦争

7.19世紀、農奴の解放宣言

8.20世紀初頭、日露戦争の後、ロマノフ王朝が社会主義革命により滅亡

 となるが、大きな歴史の流れのなかに、どこの国でもそうであるように、大きな事件に隠れた小さな事件は山ほどもあり、それらが国民の耳目に残り、俚諺や伝説や物語として残ることがある。日本でいうなら、たとえば、清水次郎長、鼠小僧次郎吉、石川五右衛門、赤穂四十七士などがそれにあたり、それぞれが事実か否かは別に、庶民の心に生きて、文化形成の一端を担っている。

 本書では、歴史の影に隠れている事象や事件、人物を拾って、これまで見えなかったロシアの断面のあれこれを露わにしてみようとの意図のもとに企画、編集された。

 内容は「重大事件簿」と「要人外電」とに分け、人物や事件を解説するのだが、一人の男が斧で78名を殺害したというような血なまぐさい話が多くて辟易するし、採り上げられた対象人物は知らない人物ばかりで、親近感がもてず、ロシア研究を仕事としない人にとっては退屈な一書という以外にない。

 ただ、次のような話は記憶に残しておいてもいいように思う。

1.日露戦争時、日本陸軍の当面の敵軍を指揮していたクロパトキンはロシア国内での評価では「上位者からの命令を実行するのは得意だが、指揮官としては能なし」。

2.古代ロシアの犯罪にはリンチが許された。

3.刑罰には絞首刑、火刑、水死刑、斬首、銃殺とあり、重罪者には絞首刑。銃殺は後頭部を至近距離から撃つのがルール。なかには、女性なら陰部に、男なら肛門に太い棒を挿入してすわらせられ自重で絶命するまで2,3日かかるという残酷な処刑があった。

4.死刑に処せられた数:

  1985年 407人

  1986年 381人

  1987年 298人

  1988年 154人

  1989年 101人

 タイトルの通り、本書は「ロシアの異聞」であり、それ以外のものではない。


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