一角獣/小池真理子著

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一角獣
「一角獣」 小池真理子著
2003年単行本初出
角川文庫 2006年9月文庫化初版 ¥400

 
 本書には八編の短編、短編としては短すぎるものには作者みずから「掌篇小説」と名づけ、いわゆる短編とは異なる書き方、構成、姿勢を示し、短編とは一線を画しているものであることを明言している。

 ここに収容されているどの短編にも水彩画さながらの雰囲気が漂っているが、どの短編も読み手に際立った印象を投影する。そして、どの短編にもそれぞれ異なる香りと色彩が流れ、それぞれに異なるムードがあふれて、そして、どの一遍にも哀切な人間という生き物の、自身にも他人にも援けてやることのできない不可分領域というものが意図されてか、意図されずにか、描かれていて、心にしみてくる。

 ただ、この作者の作品の相当数が「ホラー文庫」に収められている事実を発見して、そういえいば、本書にも幾編かにそうした傾向の偏りが窺われた。

 また、どの短編にも登場する男たちにオー・ド・トワレの香りを使う男が多いのは作者の好みだろうか、そして、自動車に跳ねられて死ぬケースが多発するのも作者の好んで使う手法なのか、この一冊だけでは結論は出せない。

 濡れ場に、男が射精直後に女に体重を思わずかけてしまう場面を「ふいに女のからだの上で水死人のように重たくなる」という表現が目新しい。また、女が好きな男に向かって「このままわたしを突き続けて、お願い・・・。できるだけ下品に、できるだけ猥褻に」という、草を背にしての夜の青姦(星姦とも月姦ともいえるのだろうが)のときの言葉にも、言葉どおりの猥褻さはまったく感じられず、淡彩の絵を見ているような気がした。


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