世田谷一家殺人事件/斎藤寅著

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「世田谷一家殺人事件」  斎藤寅(元週刊誌ジャーナリスト、現在フリーランス)著
副題:侵入者たちの告白
草思社  2006年6月初版  単行本

 

 作者は首題を通し、2000年以降急激に変貌をきたしている日本社会における犯罪、とくに外国人留学生や不法滞在者による酷薄な犯罪について、さらには日本警察の在り方につき、警告、苦言を呈している。

 世田谷で起こった一家殺人事件も、大分で起こった一家殺人事件も、大阪で起こったコールガール殺人事件も、それぞれに関連があることに逸早く気づいた作者は、東京、大阪、名古屋、大分と何度も足を運んで、ことの真相を追い、要点を把握し、それぞれ担当警察に伝えた。大分の事件などは、被害者が留学生の身元保証人だったという事実からは、留学生の受け容れについて一定のルールを新たに考えるべきタイミングに来ているといわざるを得ない。

 思えば、福岡で起こった中国人による一家皆殺しの上、海のなかに死体に錘(おもり)をつけて沈めた事件、最近では中国人女性が保険金狙いで三人の日本人男性を殺害した事件、さらには中国人主婦が夫が自衛官であることをいいことにアメリカがらみの機密文書を盗み、それを本国に報せたスパイ行為など、主に中国人による犯罪が急増しているが、日本に留学でやってくる東南アジアの人間は増える一方であり、貧しい生活に浸っていた彼らが来日して感ずるのは、日本人の豊かな生活への羨望や嫉妬が憎悪に変わり、「金さえあれば」という気持ちになって、国籍を異にする若者が連携してグループを形成、非情な殺人行為に走る傾向が年々増えていることを作者は指摘する。

(中国人は人口の多い国に生まれたこともあり、人の命を軽く扱う傾向がむかしからあるような気がしてならない。また、中国社会はいわゆる同じ格差社会とはいえ、ピンとキリとの幅が広く、豊かな人々が増えてもいるが、極貧に喘ぐ人々もいて、「中国人とは」という言葉で一括説明できないという事情がある)。

(彼らから見た日本人は犯罪に対してほとんど無防備であり、且つ、すぐ人を信用する、文字通り「性善説」のおめでたい国であって、ATMにしてもブルトーザーでまるごと運んでいけるような設置は自分の国では見たことがないし、自動販売機が人家すらないところに灯りだけつけて置かれている状態も初めて見るという、セキュリティ感覚の欠落した社会に映る)。

(これほど犯罪を容易にやってのけられる国は世界に例がないということも事実であり、あわせて、日本警察がこんな小さな国でありながら各県警で縄張り争いに終始し、互いの連携プレイに疎いというだけでなく非積極的であること、頭が悪いというべきか、世界を知らないというべきか、認識不足というべきか、いまだに親方日の丸的な日々の業務に疑問を感じていない。むしろ、警察官みずからが数々の不祥事を起こし、世間の顰蹙を買っているのも事実。結果、犯罪の変容、変貌に合致した組織づくりも、頭の切り替えもできずに、検挙率の急激な低下に甘んじている)。

(そのくせ、駐車違反などには、別の労働力を使って罰金稼ぎをする。「それで、おまえたちは一体なにをやってるんだ?」と言いたくなる。警察官はもっと賢くなるべきだ)。

 ある中国人が、「日本では軽犯罪を犯しても、警察官は優しいし、刑務所は清潔だし、食事はきちんと出してくれるし、汚いアパートで暮らすよりはるかに快適だ」と言っている。さらに、「中国なら、警察官に殴る蹴るはされるし、刑務所は狭いところに押し込まれるし、男たちの汗と便所の臭気でたまらない。それに比べたら、日本の刑務所は天国だ」とも感想を漏らしている。

 著者によれば、現在ヴェトナムからは毎年100人ずつが探鉱技術を学ぶために来日しているとのこと、(日本の探鉱は閉鎖されてはいるが、探鉱技術そのものは今だに世界一だという)、そのうちの何人かは帰国日に空港に現れず、不法滞在者となり、いずれ、中国人や韓国人がボスを勤める犯罪組織に組み込まれていき、これを「Criminal Group」というらしいが、集合、離散をくりかしつつ、アジトを設置、移転する「犯罪集団」という意味である。日本警察が管轄する土地の抱え込みに終始する限り、こうした犯罪の摘発は難しいというが、当然だという気がする。 

 先年、ようやく、外国人による犯罪だけを担当する部署が増設されたそうだが、日本の公務員のやることは恒常的に機敏性を欠き、状況の変化を予測して動くということが決してない。つい最近でも、少女が自宅傍で殺害された事件で、初動の遅疑が犯人逮捕を阻害する原因となっていると、識者は批判している。

(日本警察が昔から内部ミスを隠蔽する体質にあり、犯罪現場を見ながら昔ながらの縁懇説、通り魔説などを披瀝する。そのうえ、集めたあぶく銭で部下とともに飲む機会だけはもって仲間意識だけは強い)。

 肝心の「世田谷一家殺人事件」の首犯は韓国人であることは判っているが、未だに検挙に至っていない。

 本書は必ずしも、文章、文体ともプロという感じはしないけれども、決して下手ではなく、最後まで遅滞なく読ませる力をもつ労作。


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One Response to “世田谷一家殺人事件/斎藤寅著”

  1. midareuti より:

    日本は妙なところで人権意識が強すぎて、しかも最近その傾向が顕著になってきましたね。

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