世界を席巻するインドのDNA/門倉貴史著

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書評:ためいき色のブックレビュー-インド

  「世界を席巻するインドのDNA」  門倉貴史(BRICs経済研究所代表)

  副題:インドが進化する5つの理由

  2009年11月25日 角川SSC新書初版 760+税

 本書ではインドが進化する5つの理由として;

 1)抜群の政治の安定性

 2)中産階級の飛躍的な拡大

 3)インフラのビッグプロジェクトが目白押し

 4)安定的に増え続ける労働人口

 5)ITを軸とした生産性向上による経済成長

 を挙げ、さらには、将来インドの人口が中国の人口を抜くこと、インド人の数学力と英語力、住宅需要の拡大、女性の消費マーケットの拡大などを評価している。

 確かに、中国が人権や人道、自由を先進諸国なみに求められる社会を構築できたら、収拾のつかないことになるし、著作権の侵犯は今後ともに世界からバッシングされるだろうし、産業廃棄物の水中投棄はやがて日本海から漁業を奪うことになり、韓国、日本へのダメージは想像を超えるレベルになるだろう。それに比べたら、インドのほうが議会制民主主義が存在するから、温暖化対策の遅れという問題は両国に共通してはいるが、グローバルな関係を構築しやすい立場にはあるだろう。

 とはいえ、「バイオテクノロジーもナノテクノロジーも、日本はインドに越されている」という話は納得しがたいし、またインド映画が米国アカデミー賞を受賞したというだけのことで、「印流ブーム」が日本国内で「韓流ブーム」のように起こるだろうというのは短絡が過ぎる。

 問題は、すでに誰もが指摘していることだが、法律では禁止されているにも拘わらず、インド人自身が執拗なまでにカーストへこだわりをみせること、さらには現在時点で、大都会の道路には路上生活者が労働者としてではなく、わんさと存在し、観光客に金銭をねだることだ。

 さらに、インド国内におけるイスラム過激派によるテロ活動をどう抑えるかも難しい問題。

 本書によって知ったことは、古代インド時代、先住民はドラヴィダ人だが、そこに中央アジア方面から侵入してきたアーリア人が混血し、ためにインド・ヨーロッパ語族といわれる白人系民族となった。現代インド人のなかに肌の色が白い人と黒い人がいるのはそのためで、カースト制度をつくったのはアーリア人だという。

 そして、カースト上位者は「ものづくり」をしないのが鉄則。「ものづくり」は下々(しもじも)の人間のすることという観念が出来上がっており、かの有名な「タージマハル」もペルシャ人の手になるもの。

 読後の感想としては、インドの将来性を疑うものではないが、作者の「偏らない立場で解説する」という言葉とは裏腹に、「終始中庸を堅持している」とは感じられず、インドへの肩入れが否定できなかった。そのあたりを差し引いて読むかぎり、本書の「インドの手引き」としての価値が減ずるものではない。

 


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