中国の大盗賊・完全版/高島俊男著

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「中国の大盗賊」 高島俊男著  講談社現代新書

 

 中国の歴史は「盗賊どもや、ならずもの(匪賊)らが跋扈、君臨した歴史」であることを、ここまで言い切ってしまっていいのかと心配になるほどしっかり書いてある。

 あらためて思ったのは、どでかい砂漠を含めた国土のサイズ、人口の密度、歴史の長さ、国境を接する国々、それぞれの日本との相違。

 富や財の配分のはなはだしい不公平、偏りが「なんでもあり」の世相をつくり、むろん貧者が大多数だったのだが、そうした風土に「盗ること、簒奪することに成功した者が王者」という思想が生まれた。

 「それゆえに、前王者の建立した宮殿はことごとく焼かれ、廃墟と化し、遺物は石造か、地下に人知れず埋められたものに限られている」という著者の言は当を得ている。と同時に、前王朝の血統に繋がる者はことごとく殺された。

 近代になって、相容れるはずのないマルキシズムを政治をつかさどる側の都合のよいように、人民をして意図的に曲解に導き、毛沢東以後の中国共産党をかたちづくった背景が納得のいくまで解説されている。

 殺し合いは人類に常とはいえ、この国の殺し合いの歴史は半端ではない。そのことは現代においても、犯罪者に死刑が決まるのも早いし、刑の執行も迅速なことにも表れている。 このことには「人の命は地球より重い」だとか「人権の重視」などとほざいている日本人の「甘い生命観」」を嘲笑するかのような印象がある。13億という人口をもつ国には、1億の人口をもつ国の為政者の理解を超える権謀術数が存在すると思っていたほうが応接を間違わずにすむ。

 「Revolution」、つまり「革命」という言葉に、中国人のほとんどが興奮し、過剰な反応をみせるという著者の言葉、そして、この国に残る「お話」や「物語」のほとんどが君臨しようと足掻いて失敗した人間や君臨に成功した人間の演説に基づいているという解説が痛烈な記憶となって脳裏に残った。

 われわれが学校で習う漢文に美辞麗句や常識を超えた誇張が頻発する理由が諒解できる。誇張や美辞が欠けていたら、読み手の記憶に残らない。


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