北朝鮮を見る、聞く、歩く/吉田康彦著

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「北朝鮮を見る、聞く、歩く」
吉田康彦(1936年生/大阪経済法科大学客員教授)著
帯広告:「北の素顔」、文化で読み解く「金正日体制」
2009年12月15日 平凡社より新書初版
¥800+税

 

 北朝鮮に関する書籍に共通するのは体制の前時代的な様相やテポドン、ミサイル、拉致問題への批判、ないしは不快感を表現することで、その意味で本書は一般的な通念とは異なる内容に終始していることにはっとさせるものと同時に違和感を感じさせた。

 本来は一つの邦であるべき民族が北と南に分断されていることへの哀感、憐憫をベースに書かれた著作だと思いつつ読み進めはしたが、北朝鮮礼賛といった表現とともに日本人の心情を逆撫でするような表現が随所にあり、次第に辟易感が胸に沈殿する。

 独裁を世襲でやるような国の発言を信頼する気は少なくとも私にはないし、作者が強調する「北朝鮮は旅行の好きな者にとって最後の秘境」といった考え方そのものに強い忌避感をもつ。一体、この著者は世界の至る地に足を運んだことがあるのだろうか?

 とはいえ、本書は他の書籍が触れていないフィールドにも踏み込んでいるため、初めて知ったことも少なくない。たとえば、(1)日本人が夏バテ予防にウナギを食べるように、北朝鮮人は犬の肉を食う。南の韓国では西欧からの批判に応え、犬の肉を食うことは禁止されているが、裏街に行けば韓国内でも食える料理店は幾つもある、(2)南と異なり、北にはレア・メタル資源が大量に埋まっている、(3)小泉首相が訪朝した直後は平壌の総合大学日本語学科には国交回復を期待して200人もの学生がいたが、今では数十人。現在、語学のなかでは英語を勉強する学生が最も多い、などなど。

 ただ、私は北朝鮮がしばしば見せる「マスゲーム」が全体主義、集団主義を代表するようにしか感じられず、目にするたびに鳥肌が立つ。

 北朝鮮関係の書籍が書店で目に入るようになったのは15年ほど前からで、その頃の著作はほとんど脱北者の体験談だったが、当時、私は数冊を読んだ。


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