南アジア・世界暴力の発信源/宮田律著

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書評:ためいき色のブックレビュー-南

  「南アジア・世界暴力の発信源」 宮田律(1955年生/イスラム政治史、国際政治専攻)

  帯広告:混迷するアフガニスタン、暴力が吹き荒れるパキスタン、大国インドが抱える不安

アメリカが刺激する、暴力の連鎖

  2009年11月20日 光文社より新書初版  ¥740+税

 本書がいう南アジアとは、インド、アフガニスタン、パキスタンの三国を中心とするものであり、このエリアを軸に暴力の構図を描いたもの。

 紀元前から今日に至るまでの、古くは数々の台頭しては滅んでいった王朝が辿った有為転変の歴史、人種の混合、支配者と被支配者の入れ替わりと、それぞれの支配者が行なった暴力と圧制、併せて欧米諸国やロシアなどからの干渉と支援という名を借りた武器供与を解説するという、細密画を見るような内容となっていて、このエリアに興味のある読者には垂涎の書といっていい。

 帯広告の裏表紙には、「アフガニスタンで米軍の兵力を増強させることは、アフガニスタン、パキスタンの武装勢力をいっそう急進化させることになる。事実、パキスタンでは暴力がますますエスカレート、ブッシュ政権の対テロ戦争がはじまる前年、2000年に発生したテロ事件はわずか14件であったものが、2008年には600件を超えた」とある。

 「日本は地下資源を中東に依存している国であり、このエリアの情勢に無頓着ではいられぬ立場にある。欧米とも日本とも文化の生い立ちがまるで異なる南アジアを理解し、平和国家の建設を目的とした支援こそが望まれる」とは作者の言葉だが、民主党がマニフェストにうたった内容とも相似の関係にあり、だからこそ今後の成り行きには目が離せないものの、現実にテロが多発するエリアで日本の支援が滞りなく行なわれるか否かについては予断を許さない。


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