南蛮巡礼/松田毅一著

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nambanjunrei

「南蛮巡礼」 松田毅一著 中公文庫
昭和42年初上梓、56年文庫化

 

 (私は本書をラスベガスの友人宅で読んだ。)

 ヨーロッパ人の布教にはじまる足跡と悲劇を史跡や史料をベースに九州各地に求め、往時の受難と苦闘を偲ぶ書。学者による克明な調査、真偽を糾す徹底した姿勢は尊敬に値する。「宣教師は故国を棄てるべきだ」という考えにも納得。とはいえ、現実には、宣教師というものは故国のために布教を行った例が多く、宣教の成功が本国によって利用、植民地化に移行した例が少なくない。

 16、17世紀と現代とで、漢字の読み方がかなり違うこと、そのことがローマ字でしるされた当時のバテレンの文書から知ることができるというのも面白い。

 16世紀の日本をとりまく国際環境は、明(中国)、朝鮮、台湾、フィリピン、インド、琉球などだが、秀吉が(朝鮮征伐のほかに)アジアへの侵略計画をもっていたことがバテレンの文書から明らかになる。これも面白い。

 天正時代、「天正少年遣欧使節」というのがあった。4人の少年(いずれも九州大名の関係者)がポルトガル、スペイン、イタリアへ旅をし、八年がかりで帰国すると、日本はすっかり変貌していたという話。

 日本人によるはじめての修学旅行だと考えると、いっそう面白い。4人が欧州で学んだことは当時の日本人一般の知識をはるかに超えるものだったはずで、もし鎖国していなかったら、文明開化は早まっていただろう。少年らは印刷機械を持参して帰国した。(とはいえ、一方で、徳川家康は御朱印船を公的に認め、関が原以後、発生した多くの浪人どもを東南アジアに運んだといわれる。シャム(現在のタイ)に山田長政がいて、タイに王国を建設すべく、浪人らを長政に仕える兵士として送った可能性が否定できない。薩摩には琉球王国への侵入を許可していたのだから。

 もちろん、早い時期に鎖国が解かれていたら、日本がどうなっていたかはだれにも判らない。

 ちなみに作者は「ルイス・フロイス研究」の第一人者。ルイス・フロイスは16世紀に日本に足跡を残したポルトガル人宣教師。

 同じ著者の「黄金のゴア盛衰記」も読んでみたくなった。


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