君はピカソを知っているか/布施英利著

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「君はピカソを知っているか」 布施英利著
ちくまプリマー新書 2006年12月初版

 

 ピカソは1881年、スペインに生まれ、1973年、91歳で没した超有名な画家である。また、画家として、生前に成功を収め、裕福な生活が可能だったという点でも稀な人物であり、ゴッホなどと比較すると人生の相違が際立っている。

 本書を読んであらためて驚いたのは、死ぬまで若い女に不自由しなかった精力と経済力、生涯に七人の女と暮らしたが、結婚はロシアの踊り子であり上流家庭の娘だったオルガ・コクローヴァと、70歳から死ぬまで最後に暮らしたジャクリーヌ・ロックの二人だけだったが、それはオルガが死ぬまで別居はしたものの離婚には同意しなかったため。

 同居する女が変わるたびに、作風に変化が起こるのも、芸術家らしい繊細さによるものであろう。

 本書では14枚の絵の写真を掲載しつつ、それぞれの時代にどう変化したかを説明しており、一緒に暮らした七人の女性それぞれにも簡単に触れている。

 また、天才的な仕事を遺した芸術家が多くの別人の過去の業績の上に成立したように、ピカソの成功もまた多くの過去の画家たちの業績の上で可能だったことを示すため、ダ・ヴィンチ、レンブラント、ベラスケス、ミレー、ドーミエ、クールベ、マネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、モネ、マティスなどにも説明の輪を拡げ、10枚の絵を掲げてピカソへの影響を暗示する。

 ピカソの最後の女となったジャクリーヌは莫大な遺産を得、経済的な問題はまったくなかったにも拘わらず、ピカソの没後、十数年して自死、五人目の女だったマリー・テレーズ・ウアルテルはピカソの没後、4年目にやはり自殺している。二つの自死はピカソという人物がそこまで魅力的だったかという推測を促すが、本書はそこまで言及はしていない。

 ピカソという巨匠を多くの時間をかけずに知るうえで、本書は格好のガイディング。


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