君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか/布施英利著

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君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか
「君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか」
 布施英利著   ちくまプリマ-新書
 

 この天才に関しては、書画を通し、建築物を通し、遺された膨大なメモを通し、世間の評判を通し、テレビ画像を通し、書籍を通し、なんとなく理解しているつもりでいたが、まともに本人を主題とした書籍を手にとったのは初めて。

 意図して優しく解りやすく書かれた動機は理解できても、この天才に肉薄するという点では、読後に充足感がない。 理由の一つは本書にちりばめられた写真ではなかろうか。 折角、解説を補助するためにコストをかけておさめられた写真が小さすぎ、かつ半ばボヤケていて、よくわからない。

 著者が画家であり、解剖を手がけた経験者である点、そういう視点から教えられることはあったし、生物を観察し、宗教画を描き、工学機械の創造へと飛躍させていったダヴィンチの変容もわかるけれども、残念ながら、なにか物足りないものが残った。

 これはもう、これまで避けていた「ダ・ヴィンチ・コード」を読まなければ、おさまりがつかないような気分に陥った。 とはいえ、ダ・ヴィンチ・コードの中身は想像できるような気がして、入手してはいるが、いざ読書しようとすると他の本に手がいってしまう。

 西欧は、たとえばイギリスの元首相チャーチルがいったように、かつてローマ軍の侵略に遭って、影響を受けたことをプラス思考でとらえているが、一般論としていえば、西欧全体はローマ帝国のみならず、古代ギリシャの偉人たちの遺した業績に大きく依存することで、哲学にしても、理念にしても、科学にしても、その影響を多大に受けるという恩恵に浴している。そのうえ、本書に登場するレオナルド・ダ・ヴィンチは西欧の、いわばシンボルとして、科学的にも、物理的にも、芸術的にも、謎の部分を含めつつ、無視できない存在として立ちはだかっているような気がする。

 当時、西欧の生んだ最高の天才であることに間違いはないが、昨今のように、学問が分化している社会では、ダ・ヴィンチの天才性は生かせないだろう。とはいえ、彼が書面に残した想像図はいまでは実現され、利用されている。


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