国防の真実 こんなに強い自衛隊/井上和彦著

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国防の真実 こんなに強い自衛隊

「国防の真実  こんなに強い自衛隊」 井上和彦(1963年生)著
双葉社  単行本  2007年2月初版

著者は小学館の「SAPIO」、文藝春秋の「諸君」、産経新聞の「正論」などで執筆活動を行ない、スカイパーフェクトTVでキャスターを務めている。

本書には自衛隊の陸自、海自、空自を含め、機密部分は除いて、ほとんど余すところなく網羅され、自衛隊の全貌が明らかにされている。このような書籍が上梓される世の中になったこと自体に感慨一入(ひとしお)のものがある。

私自身が考えていたこと、本ブログで再三にわたって主張したことを自ら確認する作業にもなったが、戦闘機をはじめ、ミサイル機能、レイダー追尾、艦船などの名前が重複して書かれていることで、若干の混乱が避けられず、全体の整理に「もう少し推敲を惜しまなかったら」と言いたいくなる箇所もある。

「日本人は沖縄が負担し提供する軍事基地は日本全体の75%だと誤解している。これは日本本土における基地が日米が共同使用している基地をゼロと勘違いしてからで、実際に沖縄に存在する基地の割合は25%に過ぎない」(NHKでは土曜日の子共向け放映で、アメリカが使用している軍事基地は土地の広さで75%と明瞭に発言している)。

「沖縄で基地反対運動しているのは県外の人間で、基地がなくなった場合に想定される失業者、数千人の再就職の機会などまったく考えていない、単に左傾化したバカどもの運動」(この事実は、私自身沖縄には10年を過ごしているので、良く認識しているし、土地を基地に提供している人には使用料が支払われ、返還されては困る人もいる。とはいえ、「基地反対運動が県外の人間だけだ」というのは過言)。

「日本は自国の防衛を安保に依存し、アメリカの所有する核兵器の庇護のもとにありながら、核アレルギーへの過剰反応で、核抑止力に目をつぶるのは身勝手というもの。あらゆる手段を講じて、自国民と領土を自らの手で守る決意と覚悟のない国が、どうして世界平和を口にできようか。現行法を遵守する限り、日本は攻撃を受けてから防衛手段に訴えるしかないが、兵器の機能が格段に優秀になった現今、そうした防衛体制では遅すぎることを銘記すべきで、本質的には危険を察知した段階で、先手の攻撃を考慮できる法律に改正すべきだ」

「自衛隊の現有兵力は、世界最強とされる実用戦闘機F15「イーグル」203機を含む、作戦用航空機470機、高度な電子システム搭載の艦艇151隻、戦車約950両、総兵力24万人を擁している。世界3位といわれる国防費は核戦力を除く、通常戦力では世界トップクラス」

「一方、中国の兵力は226万人、アメリカは155万人、韓国69万人、ベトナム48万人、ドイツ28万人、イギリス22万人、その上、各国は予備兵力として中国は80万人、アメリカは96万人、韓国は450万人、中国は80万人、ドイツが35万人、イギリスが22万人と、兵力の面で自衛隊が劣っているかに思えるが、それでも日本の自衛隊の戦力がトップクラスであるのはなぜか?」

「自衛隊が所有する戦車はたったの950両、野戦砲は720門に比べ、韓国などは戦車2330両、これに在韓米軍のM1戦車120両、北朝鮮が持つ3500両を加えると、朝鮮半島にはトータル5950両の戦車がひしめきあっている感がある。また、中国は8580両あるというから、自衛隊の戦車など、数だけいえば、足元にも及ばない。ところが、自衛隊の兵器は戦車に限らず、量よりも質で数の不足を補っている。自衛隊が所有する戦車(90式)はハイテクを搭載し、性能は中国、朝鮮半島の戦車とは比較を絶している。とくに、北朝鮮の兵器はほとんどは旧ロシアの古い武器で、近代戦争では役に立たない。

砲弾の自動装置によって、通常なら乗員数4人必要のところを3人で補い、初弾の命中率が極めて高く、猛スピードで走りつつ目標を狙い撃つ『走行間射撃』はずば抜けている」

「地対艦ミサイル連隊の88式地対艦ミサイルは100キロ以上の射程距離にある艦艇を一撃で仕留める能力をもつ。光ファイヴァーがTM赤外線誘導装置によってコントロールされる96式の多目的誘導弾は後方の捜査員がミサイル自身が捉えた画像を見ながら、目標に命中させるまで誘導する百発百中のミサイルである。

「改良ホークミサイルの後継として配属された国産の03式と呼ばれる中距離地対空ミサイルをはじめ、ハイテク兵器が続々と研究され、現場に登場している」

「教育レベルも自衛隊は世界よりはるかにレベルが高く、戦力向上に貢献している。ちなみに、こうした教育機関をもつ国は日本以外ではフランスだけである。また、定期的に自衛隊員は、アラスカやグアムで世界で最も実戦経験の多いアメリカ人兵士から直接指導を受けつつ、協同訓練を行なっている」

「洋上の敵艦隊に対しては、88式地対艦ミサイル、SSM1が襲いかかる。それでも海岸にたどりつけば、かれらの頭上には多連装ロケットMLRS、155自走榴弾砲の巨弾が雨あられと降り注ぎ、空からは対戦艦ヘリ、AHISコブラ、戦闘ヘリのAH64Dアパッチ、加えてはるか後方の山陰から96式多目的誘導弾がハイテクミサイルで狙い撃ちする。それでも、撃ちもらせば、90式戦車で殲滅する」

「現在では、かなりの兵器が国産であり、世界に冠たる技術を機器に利用し、製造されている。とはいえ、日本の電化製品や、民生用電子部品、さらには人気ゲーム機プレイステーションがレーダー誘導兵器に転用されたりすることがあり、この事実は日本製品に高性能の技術が注ぎ込まれていることを物語るものだ。(だからこそ、日米の最近兵器への中国によるスパイ活動も活発で、それだけ彼らが日本の技術を恐れているといえるのだろうし、アメリカも日本人の技術力を信頼している)。

「海自は4万4千人、護衛艦53隻、潜水艦16隻を含む、151隻の艦船を所有するほか、固定翼哨戒機P3Cを96機、哨戒ヘリ97機。主要艦艇は数の上ではロシアの870隻、中国の780隻には及ばないが、核戦力を除けば、質的には日本海軍は抜群の技能に支えられている。

海自の男性が「護衛艦が搭載している電子機器、武器、どれをとっても世界最高水準のものばかり、現段階で中国海軍がこれに対抗することは不可能です」と語っている。

また、機雷の除去作業では一等地を抜くのが日本海軍、対潜水艦の動静のキャッチと、殲滅する能力は大戦中にアメリカ潜水艦にやられた反省を踏まえて研究に研究を重ね、世界最強といわれるサブマリーン・ハンター、P3C哨戒機を96機保有している。たった16隻の潜水艦だが、静粛性、攻撃能力など、あらゆる面で優れており、ディーゼルエンジンを搭載する通常動力艦としては世界一の性能を持つ。2年前に中国の潜水艦が日本近海に入ったとき、日本のP3C哨戒機はその動きを初めから去っていくまで正確に追尾している。

海自の唯一の欠点は航空母艦を米国の第7艦隊に依存していること。

現在の戦艦はイージス艦だが、全長161m、排水量7250トンしかなく、武装は127ミリ単装砲一門、多銃身20ミリ機関砲2基。同艦には複数の航空機を同時に攻撃できるスタンダード対空ミサイル、またはロケット対潜水艦ミサイルを収納するMK41垂直発射システムが搭載され、加えて、射程100キロを超える対艦ミサイル用の連装発射装置が2基、対潜水艦魚雷を収納した3連装魚雷発射管2基も搭載されている。

海自のもつ53隻の護衛艦はそのほとんどがハイテクシステム艦である。

「航空戦力について、空自は戦闘機、偵察機、早期警戒管制機、輸送機、トータル472機(2006年3月現在)のほか、救難機、練習機を所有する。戦闘機はF15J/DJが203機、F4EJが91機、F2が68機、C130H戦術輸送機16機、C1ジェット輸送機26機、AWACS(早期警戒管制機)4機、E2C早期警戒機13機、CH47J輸送ヘリ17機を有する。

中国は作戦用航空機だけで3530機、韓国600機、北朝鮮590機(但し旧式のロシア戦闘機のみ)。日本のF15J戦闘機はレーダー追尾ミサイル4発、赤外線追尾ミサイル4発、20ミリ機関砲1門を装備している。機能的にほぼ変わらぬ戦闘機を200機もち、格闘戦能力では世界最強。

日本以外でF15を所有する国はアメリカ、イスラエル、韓国、サウジアラビアだけで、今日まで、現実の空中戦で一機も撃墜されたことはない。

さらに、日米共同開発のF2戦闘機の配備も進行中。この新鋭機は主任務の対艦、対地攻撃のほかに、対航空戦闘機もこなす万能機である。

航空機には「可動率」がついて回る。所有していることと可動率とは別物。日本のF5Jは恒常的に90%を越えていて、これも世界で最高のレベル。この戦闘機を開発したアメリカでも80%、中国のもつロシア製スホーイ27は65%。可動を良くするためには、優秀な整備士と高品質部品の円滑な供給が不可欠」

「空対空ミサイルは初めアメリカ製のものをライセンス生産していたが、今では純国産の90式、空対空誘導弾(AAM3)という旋回性能や対妨害性能などに優れた機能をもつミサイルを配備している。また、F15J戦闘機にはAIM7(国産99式空対空ミサイル)を搭載している。これには上記した性能に加え「撃ちっぱなし」性能が装備され、世界でもトップレベルのレーダー追尾式」

「陸自が所有する88式地対艦ミサイルはこの80式空対艦誘導弾の改良派生型であり、さらに88式地対艦ミサイルが90式艦対艦誘導弾へと進化。さらに、90式は91式空対艦誘導弾を生み、海自のP3C哨戒機に搭載。そして、いま、これが93式空対艦ミサイルに進化し、F2戦闘機に装備されている。命中精度は進化ごとに向上している」

「冷戦中、スクランブルの回数は年間600-900回だったのが、現在では150-200回。一度、ロシア機が沖縄の上空を偵察飛行したとき、空自の戦闘機がスクランブルして警告したが、ロシア機は自衛隊がロシア側が仕掛けない限り何もしてこないことを知っていて、二度も上空を侵犯し、悠々と去っていった。ところが、民間機である大韓航空機が誤ってサハリン上空を飛んだとき、ロシア戦闘機は警告もなくいきなり機銃で撃墜し、多くの民間人を死亡させた」。

「日本領土上空にいまだに米軍の航空管制空域があるのは、民間航空機の離発着を管制する立場にある国土交通省が協力的でなく、防衛省とのあいだに角逐があることを知っているからで、万が一、領土侵犯してくる敵機を強制着陸させた場合、管制官がどう対応するかによって、国民から軍用機への非難が起こりかねない。政府間にこのような角逐や葛藤があって、一体彼らはどうやって国民と国土を守ろうとするのか。これでは、日本が国家としての体裁をなしていないとの批判を回避できない」

本書では、以上のほかに、自衛隊の民生協力、災害時の復興支援、平和維持、災害救助、離島居住者への救急ヘリ活動、不発弾処理、政府専用機の運行、南極観測船の活動などに触れている。

「日本のマスコミは北朝鮮のテポドンやミサイルの実験に周章狼狽し、びびりまくるくせに、自衛隊員に国内で災害が起こったり、海外での地震、津波が起こったりしたときの活動に関して、ほとんど無視するか、現地の人々が歓迎している図は決して映像に流さない。ニュースには日本人の戦争アレルギーを利用して、偏向報道や虚構を流し、国民を意図的に騙しているとしか思えない」。

自衛隊が海外派遣されると、「軍国主義の復活」だとか、「アジア諸国の人々の感情を害する」とか言って騒ぐけれども、そうした日本のマスコミの姿勢を喜ぶのは中国と韓国と北朝鮮と左翼だけ」

「自衛隊員が海外派遣に危惧を抱くとしたら、現行法に従っている限り、軍隊としての当たり前の任務が遂行できないからであって、自衛隊員にそうした不安感をもたらしているのはマスコミであり左翼である。国際的な同意を得るような軍事常識というものを国民が持たずして、国際貢献も自国防衛もできるわけがない」

「平和ボケで、脳神経が腐りかけた政治家に国土、国民の生命と財産を守る知恵があるはずもなく、国際的な常識からも言動が逸脱している」

イラク戦後、自衛隊員が一人も死なずに帰国できたことは、著者が言うように自衛隊員が真摯な姿勢を堅持し、土地の人間の目線で支援活動を行なったからということも否定しないが、サマワという安全地帯で、その上、イギリス軍やオランダ軍に周囲を警護してもらったおかげではないのかと私は思っている。

「中国がいずれ最終的に採る手段は日本の靖国神社参りを許容し、東京裁判の不当性について発言し、アメリカの原子爆弾投下や無差別絨毯爆撃を批判することで、日米の離反を図るか、あるいは、逆に地域格差が原因で起こる内乱から国民の目をそらすために、いきなり台湾を攻撃しはじめるかの、いずれかであろう。後者のケースでは、米国との正面衝突は避けられず、日本に幾つもの基地をもち安全保障条約で同盟関係にある日本も敵国として扱われる。だいたい、日本の動脈ともいえるシーレーンが台湾周辺の海域を通過していることは周知のことで、台湾が民主主義体制を存続するかしないかは、直接日本の死活問題となる。

ちなみに、台湾は独自にアメリカ製F16戦闘機を150機、フランス製ミラージュを60機、保有している。

日本の軍事力は一流だが、政治も外交も三流。中国は権謀術数に長け、日本の弱点を衝いてくるだろう。

政治家の仕事は憲法を守ることではなく、自国の国民とその生命、財産を守ること」は日本以外の国では常識。

「今後の問題はコンピューターを使って、システムを破壊する可能性である。サイバー攻撃によって、敵国のインターネットを破壊、停止に追い込み、データの改竄(かいざん)が行なわれれば、前線部隊は途端に機能不全に陥る。

現に、北朝鮮がミサイルを日本海に向けて発射した直前、米国務省の中国や北朝鮮を監視する部局のCPUが中国のハッカーによって攻撃されている。CPUに依存すればするほど、サイバー攻撃は有効に働くという矛盾が起こる。そのうえ、この攻撃にはコストがかからないという利点もある。

「兵器生産に従事している日本企業は、航空機生産で三菱重工、川崎重工、富士重工、新明和工業。家電製品では三菱電機、日本電気、富士通などは現代兵器に不可欠な電子機器の製造を担当し、東芝は地対空誘導弾までも生産している。空調機器のダイキンは各種砲弾を生産。とはいえ、武器輸出は禁止されているから、大量生産して企業利益に結びつけることはできない」

作者の言い分のなかで、「靖国神社」と「皇室」に関する事項には異論があり、作者がどうしてそう拘るのか不可解というしかない。私個人は「宮内庁」が存在することでメシを食っている公務員が多すぎると思っている。

とはいえ、本書は読者の期待を裏切らない内容である。


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