地球が教える奇跡の技術/石田秀輝著

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地球が教える奇跡の技術

「地球が教える奇跡の技術」
著者:石田秀輝(1953年生/東北大学院環境科学研究科教授)&4人の新しい暮らしとテクノロジーを考える委員会)
副題:大自然のすごさを活かす「ネイチャー・テクノロジー」の世界
帯広告:今、必要な智恵はすべて「自然の恵み」にあった
2010年3月25日 祥伝社より単行本初版 ¥1400+税

 

 われわれはいま地下資源に依存した文明の崩壊を目前にしている。人類が生き延びるためには、これまでのライフスタイルから新しいライフスタイル(地下資源に頼らない)に変えていかねばならない。

 こうした危機を迎えたのはわれわれ自身の自然に対する驕(おご)った態度にベースした生産様式と、その様式に依存していることに原因があり、われわれみずからがわれわれの母体である自然を壊してきたからだ。

 1950年から2000年の半世紀の間に、人口は2.4倍、自動車台数は10.3倍、石油消費量は7.3倍、電気は2.1倍、木材パルプは14.3倍、鉄の消費は4.3倍と際限のない消費拡大が続いている。(さらには、食料問題が世界に大きな格差をもたらすようにもなった。いずれは水も世界的な問題となるのは必至)。

 日本は少子化にストップをかけられずにいるが、一方で世帯数は増え続けている。世帯ごとに電化製品を持っているから、エコ・コンシャスに生活しても、CO2排出は増加の一途。

 「日本人社会で使われる割り箸もひどい」という指摘があるが、もし中国人の全人口が箸を使い棄てにしたらどういうことになるか、あるいはかれらの全家庭にトイレが装備され、トイレットペーパーが用意されたら、いったいどこの森林地帯が禿山になるのだろう。

 中国はそれより前に、重金属や鉛による汚染で健康被害が続出、汚染は飲料水にまで及んでいると仄聞する。そして、砂漠化現象を含め、空から、海から、被害が日本にもやってくる。

 「人間はいちど得た快適性や利便性を手離せないという欲があり、これを『生活価値の不可逆性』という」。

 本書の著者は「新しいテクノロジーを自然から学んで、この危機的状況を乗り越えるための智恵の源泉を紹介している。

 たとえば、「シロアリの巣はエアコンディショニングが絶妙に効いている。これを参考にして、屋内の湿度を適度に保つ壁が考案された」、「サメの皮膚からは水の抵抗の少ない水着が生まれた」、「カワセミのクチバシから最新鋭の新幹線の先頭車の形が生まれたが、形態模倣によってスムーズな動きが可能になった」、「フクロウは風切り羽を用いて獲物に向かう滑空時に音を消すメカニズムをもっていて、新幹線はこれも模倣し、パンタグラフで30%以上の騒音の削減に成功している」、「砂漠に棲むある虫は背中にたくさんの突起をもち、空気中の水分を集め、水滴の大きさになると、背中をころがして落とし、口に入る仕組みとなっているが、飲料水の枯渇が遠くない将来に人類を襲うといわれている昨今、この虫からも形態模倣が可能かも知れない」。

 さらに、「魚の大群や鳥の大群がリーダーもいないのに、互いにぶつかることなく整然と動けるのは何故かを研究すれば、機能模倣ができるかも知れない」。(側線に魚独特のセンサーがあり、これが大群で泳ぐときに互いに衝突しないために働いている)。

 「世界の人々が日本人の生活レベルと同じ生活を望めば、地球が2.46個必要になり、アメリカのレベルを望むなら、4.5個必要になる」という。

 人類が消滅しても、地球の自然は惑星として存在し得る限り、そのサイクルを持続していくだろうが、人類という種は自然の完璧さに比べ、あまりに不完全な生物、自らの非を悟り、新しいネイチャーテクノロジーに生活のサイクルをほどほどの速度で変化させていかないと、文明の崩壊はあっというまにやってくる。

 (人類が心がけてきたものと地球の自然環境とはあまりにも相性が悪い)。

 キリスト教の聖書には、「海の魚、空の鳥、地の上を這う生物すべてを治めよ」と記され、人間と自然とを対立的

に捉えている。デカルトは「自然の法則を解明することで人間の自然支配は容易になる」との考えを披瀝しているが、イギリスで始まった産業革命はデカルト論に基盤を置いている。(人類の傲慢、不遜が自らの首を絞めることになろうとはデカルトも予測できなかった)。

 「日本という国は火山列島であり、地震が多発し、台風も頻繁に来襲、その都度、川や海は暴れだし、雷も落ちる。そういう環境で生活する日本人が自然を対立関係に捉えるような考えをもつわけがなく、畏怖する姿勢からむしろ自然との和合を望み、治水に意を用い、明瞭な四季の移り変わりを花鳥風月の世界と捉えて愛でるという生活をしてきた」。

 だからこそ、この国独特の和歌、俳句が創造された。

 著者は強調する、「先進国にあって、日本のような自然観をもった国は日本以外にない」と。(にも拘わらず、日本人も自然を損ないながら生活している。車を走らせても、エアコンをつけても、CO2が撒き散らされる)。

 本書にはQ&A形式でも詳しく状況を説明し、意見を簡潔に述べ、上記から漏れた多くの示唆が掲載されていて、このタイミングで読む本としては絶好の対象だと自信をもって推奨する。

 最後に、なかで、一つだけ、個人的に知って驚いた話を以下に記す。

 「キツツキは1秒間に20回も木を突つく。木を突く衝撃は時速25KMで壁にぶつかるほどだが、クチバシの根元に筋肉が発達し、頭蓋骨のなかには大きく厚いスポンジがあり、後頭部には舌の付け根があって、三重の衝撃吸収メカニズムで脳を守っている」

 「蜘蛛の糸の持つ弾力性と強靭さ」の話も紹介したいところだが、ぜひ本書を入手して読んでください。いい本です。


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