地球の声が聞こえる/藤原幸一著

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「地球の声がきこえる」 藤原幸一(写真家、生物ジャーナリスト)著
副題:生物多様性の危機をさけぶ動物たち
2010年6月20日 講談社より単行本初版  ¥1500+税

 

 本書は世界20箇所を採り上げ、顕著な地球温暖化現象とその影響について、それぞれに多くのカラー写真を添えて読者の目に訴えつつ、誰にも判りやすく纏(まと)められている。

 毎週、日曜日の夜のNHK番組では国内外の野生生物を紹介しているが、本書に出てくるような環境破壊などには触れていない。

 以下には、それとの比較を兼ね、本書が扱うすべてを紹介するわけにはいかないが、「これは」と思ったところを以下に記したいと思う。(  )内は私個人の意見。

*地球環境問題は(人類の持ち込んだ)「文明の深刻な病」。

*南極がゴミだらけになっている理由は各国の南極観測隊がゴミを捨ててきたからで、この残骸が南極に棲息するアデリーペンギンの繁殖地を奪ってしまっている。(観測隊がゴミ捨て放題というマナー違反を平然と行うという非人間的な行為に出るとは夢にも思わなかった)。

*インドネシア、コモド島に棲むコモドオオトカゲ(別名コモドドラゴン・恐竜の生き残り)は本ブログでも「バリ島体験記」で紹介しているが、コモド島に住む住人が毎年増え、耕作地の開拓や放牧のため森の破壊が進んでいて生態系に影響している。

 コモドオオトカゲは森に棲むシカやイノシシ、サルなどを捕獲して食料としていたのが、最近では人間の住居に近づくことが多く、少年が咬まれ、出血多量で30分後に死亡した。コモドオオトカゲの歯や涎(よだれ)には毒性の分泌物があるため、一度咬まれると、大きな牛でも数時間後には死に至るという。

(ただ、コモド島のような特殊な土地になぜ移住者が増えるのかに関する説明はない)。

*日本は外国産の動物植物の大量輸入国であり、大量消費国でもある。外来種を野放図に受け入れることを許可する農水省や環境省の姿勢も基準も理解を超えている。外来種のアライグマ、マングース、タイワンリス、ミドリガメ、ブラックバス、カミツキがメ、中国産オオサンショウウオなどを輸入したため、後で手に負えぬほど増え、対策を講ずること自体、難しくなる。そして、最近では、クワガタムシ、カブトムシなど昆虫まで自由に輸入できるようになったことで、在来種との混雑が既に始まっている。

(沖縄でもかつて毒蛇のハブを駆除する目的でマングースを台湾から輸入したものの、1対1の闘いではハブを噛み殺しはするが、野生状態ではハブよりも農作物を食い荒らし、当初の目的には適わなかった)。

*タスマニアの本島沖にオーストラリアオットセイの繁殖地があるが、最近、溺死するオットセイが急増。理由は漁師が仕掛けた魚網に絡まったり、底引き網や延縄漁(はえなわりょう)の針についたエサにおびきよせられ、オットセイだけでなく、猟の対象でないウミガメなども犠牲になっている。

(オーストラリアがグリーンピースを支援して日本の捕鯨調査船の仕事を邪魔するまえに、おのれの国内の惨事の対応策を考えるのが先ではないか。和歌山県でのイルカ漁は確かに血だらけの海から残酷なイメージしかないけれども、オットセイやウミガメを魚網で殺すのも決して見よいものではない)。

*あのガラパゴスを観光資源と考えたエクアドル政府は多くのエクアドル人をガラパゴスに移住させたのがきっかけとなって、島々はゴミの山となり、むかしから海賊や船乗りによって持ち込まれた家畜やペットのほかに近年の移住者によって大量の動植物だけでなく、病原菌まで持ち込まれ、すでにデング熱を発症した患者まで出てしまっている。

(ダーウィンもそこまでは予測しなかったであろう。ダイバー憧れの島々も、島々を囲む海もむかしの面影を失っているという事実には唖然とした)。

*南アフリカの最南端、喜望峰沖は石油を満載した大型タンカーが、ソマリアの海賊行為によってスエズ運河を通過できず、アフリカ南端を回って欧州を目指す、あるいはその逆コースをとるという行程のなかで、ときおり座礁して大量の油を流し、当地棲息のペンギンたちは油だらけにされ、ボランティアが石鹸で一羽一羽洗う手間も大変だが、ペンギンのなかには油を飲んでしまうケースもあり、その場合はほとんど助からない。

 また、タンカーは夜陰にまぎれて、タンカーの油洗いをこの沖合いで行なうという不埒なやつもいて、土地の人間は困惑している。

*オゾンホールは南極大陸のサイズの2倍になっていることをまず知るべきだろう。オゾンホールは地上で排出されるフロンなどが原因となって上空のオゾン層が破壊され、薄くなる現象をいう。オゾンは有害な紫外線から地表の生物を守っているのだが、1%のオゾン層減少は皮膚癌3-6%の増加につながるし、白内障も増える。

 フロンはエアコン、冷蔵庫の冷却剤や半導体など精密機器の洗浄財、スプレーの圧力剤などに使用されている。

*北極圏の温暖化により、氷が解けてしまい、アザラシの赤子が流氷に乗って外海に移動、氷が解けて海に放り出され、溺死する。2007年には10万頭が死んだ。北極圏の温暖化は地球全体の水位を上げるなど直接影響する。この事実は北極熊(白熊)の絶滅をも導く要因となろう。

*クマゼミはもともと福井県以西の西日本のみで見られたが、今では棲息域が北に拡がっている。

(というが、1940年ー1960年に、静岡市清水・興津の山でなんども見ている。「もともと」というのは、1940以前をいうのか?)

 上記したもののみならず、地球上の自然破壊はすべて人間の手になるもの、この救いのない人類という生物のおかげで、幾多の動植物が死滅の憂き目に遭っているか、認識と行動、認識とこれらをクリアする知的手法を人間らしく考え工夫することができるのだろうか?

 本書からは多くを学ぶことができた。

 

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