地球温暖化の最前線/小西雅子著

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tikyuuondanka

「地球温暖化の最前線」
小西雅子(気候変動プロジェクト・リーダー)著
帯広告:CO2削減をめぐる国際交渉をわかりやすく解説
2009年11月20日 岩波書店 ジュニア文庫初版 ¥780+税

 

 本書は地球温暖化に関する国際会議に常時出席してきた著者が、その内実、進行状況、約束事、各国の言い分、軋轢と齟齬などを、学生を対象にわかりやすく説明した著作で、さすが岩波は一味違うという印象であり、著作目的は達せられている。

 なかから、若干のエキスを以下に拾ってみる。

*京都議定書には「京都」というキャプションがついているために、地球温暖化会議では日本がリーダーシップをとっているかのような錯覚が流布しているが、決してそうではなく、たとえば、1990年(京都議定書の基準年)に日本は2008年-2012年のあいだに6%のCO2を削減するという目標をもったが、2009年現在、まったく減少していないばかりか、むしろ増加している。そういう実情からは、日本はカナダ、オーストラリアと同じレベルにある。

*CO2は陸上なら樹木が、あとは海が吸収しているが、陸上に森林が減り続け、海が吸収限界に達したとき、地球の温暖化は急激に進む。尤も、現時点で全人類がCO2排出をストップしたとしても、温暖化を止めることはできず、人類は温暖化された気候との共存しか選択の余地がない。

*2009年のイタリアサミットで、「平均気温の上昇を2度未満に抑えるべきだ」という科学的見解が認識されたが、それは「2度を超えたら、地球環境は生物にとって危機的環境に変貌する」との意味である。

*電気を白熱灯から蛍光灯に換えるだけで、世界は60億トンものCO2を削減できる。

*国際会議では各国のエゴがぶつかりあい、疑いや不信が渦巻くなか、ときには交渉がもつれ、決裂することもある。ことに先進諸国とBRICSに代表される主要発展途上国との利害に関しては長期にわたって同意がとりつけられずにいる。ただ、地球温暖化による被害を現に受けているのは、CO2を排出していない後進諸国である点、人類の犯したこれまでの愚挙を繰り返させないために、先進諸国による資金援助と技術移転が急がれる。

*最悪なのは最大の排出国であるアメリカがブッシュ政権下時代、徹底してこの問題に参加しなかったことと、主要途上国の中国とインドが「責任は先進国の産業革命以後の過去にある」との議論のもと、自らは積極的にかかわろうとしないこと。(人類のアホさ加減を浮き彫りにしている)。

*地球温暖化問題で最も積極的なのはイギリスとドイツであり、削減の実績も挙げている。

*日本はかつてソーラーシステムに関して世界一のレベルにあったが、今ではドイツとの比較で発電量は2分の1となっている。(日本は独占企業である電力会社の保全と利害を配慮しているからだろう)。

 著者が「技術大国を任じてきた日本が大幅削減を実現できないとしたら、いったいどこの国ができるというのか?」と憤りをこめた疑問符を投げかけているが、一方で、「日本こそが低炭素社会と豊かな生活との両立を体現する世界のモデルとなって欲しいし、なり得るのではないか」と結んでいる。

 「国際会議に出席して地球環境問題を議論している当事者のほとんどは半世紀後は生きていない」という言葉が脳裏にこびりついて離れなかったことを強調したい。

 人類はその叡智を問われている。もし叡智というものがあればの話だが。


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