地雷処理という仕事/高山良二著

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地雷処理という仕事

「地雷処理という仕事」  高山良二(1947年生/元陸上自衛隊所属)著
帯広告:この村の過去、いま、そして明日に真の平和を築く道すじが見えてくる
2010年3月10日 筑摩書房より新書版初版 ¥780+税

 

 カンボジアにおける地雷処理や学校建設に関する日本人による寄与については、日本のTV各局でそれぞれ異なる映像を流してきたが、カンボジアが必要としている支援のどの程度の貢献に値するのかがさっぱり理解できず、民放各局の勝手な視聴率至上主義の放映に振り回されていたことを本書を通じて知り得た。

 著者は陸上自衛隊時代にPKOでカンボジアを訪れたことがあり、停年後はカンボジアでの地雷撤去に自分の余生を尽くすと決心したものの、停年になったとたん一種のノイローゼに陥り、カンボジアに渡るまで10年を要したという。むろん、その期間を語学とパソコンの勉強に充てはしたが、こうした精神が著者の現地への思いを含め、ナイーブで優しい性格を表しており、やろうとしていることが中途半端でないことが伝わってくる。

 地雷には対人地雷と対戦車地雷とがあり、むろん後者のほうが破壊力が強い。また、どちらもロシア製か中国製。

 世界各国からの支援額が減ったり、打ち切られたりしたため、地雷処理手法を住民参加型に変えざるを得なくなり、この仕事の雇用に関し、家族に被災者のいる人、貧困層、女性などを優先した。

 ちなみに、地雷を英語で「Mine」、地雷の発見、処理を「Demining」、発見し処理する人を「Deminer」というが、採用した住民は Deminer に相当し、危険な仕事であることは自明だが、そのために基本的な教育訓練をた71人の雇用者に対して行なった。危険といえば、地雷が埋まっている原野には毒蛇もサソリも生息し、そうした危険もついてまわる。

 カンボジア全土に埋まっている地雷は推定400万個から600万個といわれるが、著者が所属する団体はとりあえず一定の面積を安全なものに変え、農業を可能にすることで地域の復興に貢献することを考えた。

 地雷の撤去手法には感知器を使った手作業のほかに機械を使って爆破していく方法もあるが、樹林地帯や急斜面では機械は使えず、手作業に依存する。

 発展途上国にほぼ共通する点は人々が先進諸国からの援助を口を開けて待つという姿勢に終始し、支援を土台に自立していこうという気概に欠ける点であり、著者は井戸堀りの機械を一基入手したあとは、住民自身が井戸を掘れ、自ら管理ができるように教育にも力を入れた。また、先進国に住む人々からの「可哀想だ」という感想からの支援では現地の人々の自立を導くことはできない。現地の人にも、外国から支援を受ける以上、それだけの覚悟と責任とが必要であることを強調しなくてはならない。

 著者はタサエンという村に入った2006年6月に活動をスタートさせ、日本からの支援を受けつつ、150ヘクタールを地雷除去し、処理地雷は1543個、不発弾処理は666個、学校は二校を建設、井戸は80基、道路2キロを造った。

 日本のTV放映では地雷がテーマとなると必ず脚を失った子供をまず放映して、視聴者から「可哀想に」という感想を引き出そうとするが、実際にはここ数年子供の被災者は激減している。

 (カンボジアが現時点で、バングラデシュと並んで最貧国に挙げられており、新しく世界文化遺産に指定された仏教遺跡は外国からの観光スポットとして期待されていたが、その領有をめぐってタイと対立し、交戦状態に陥ることは本書が出版された時点では予測できなかっただろう)。


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