大英帝国衰亡史/中西輝政著

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「大英帝国衰亡史」 中西輝政著 PHP文庫

 

 イギリスは欧州列国のなかで、国威を世界に唱えたという点では遅咲きの国である。

 スペイン、ポルトガル、オランダに遅れて、植民地活動をスタート。中近東、インド、香港、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、ボルネオ、アフリカの一部と、あっというまに世界でナンバーワンのドミ二オンをつくった。グァムやフィリピンはドミニオンの一国であるスペインとアメリカが戦争し(米西戦争)、奪取に成功、アメリカまでもが植民地を手に入れた。結果的にイギリスの影響力も増したし、スペインの影響下にあった中南米の諸国にも影響を及ぼした。

 本書はなにがイギリスをしてそれを可能ならしめたか、そしてなぜ衰退を余儀なくされたかを解き明かしてくれる。

 歴史は事実の集積、面白い。

 ある人が「イギリスが世界を制覇できた最大の理由は、イギリス人が粗食だから、言葉を換えれば、イギリスのメシはまずいから、どこに行っても食い物に堪えられた。なぜなら、他国のメシはどこに行っても自国より美味だったから」といったが、あたっているかも知れない。イギリスは世界のどこにも食の文化は伝えなかった。かれらは「食について文句をいうやつは紳士ではない」と教育される。

(イギリスの食についてイギリス滞在経験をした女性が書いた本を読んだことがあるが、彼女は決してイギリスの食をまずいとは書いてはいず、むしろ何が美味か、どう料理するのが正しいかを書いている)。

 もっとも、イギリス人が世界に覇をとなえつつ殺害した他国の人間の数は空前にして絶後という数にのぼるだろう。日本人も敗戦を迎えるまえまで他国の人間を相当数殺したのは事実だが、その数においてイギリス人やスペイン人には遠くおよばない。

 ちなみに、イギリスのサイズは日本の5分の3に過ぎない。イギリス人がイギリスからみて、「中近東」「極東」といった言葉をつくったが、そのデンでいえば、日本から見て、イギリスは極西である。また、ヨーロッパ人が日本をして「極東にある小国」としばしば口にするが、「あなたがたの国のサイズと比べて、日本はそう小さくはないですよ」と明言しておきたい。

 本書は読むに値したことを記しておく。


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